第9回 トロントでのブックセッション 「希望の国カナダ…、夢に懸け海を渡った移民たち」(Gateway to Promise)をお披露目

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2017年9月21日 第38号

 3年半振りのトロントであった。まだ印刷の匂いがするほどの刷り上がったばかりの翻訳本「希望の国カナダ…、夢に懸け 海を渡った移民たち」(Gateway to Promise)を引っ提げて、西海岸から始まったカナダ日系史を紹介するため、私は9月初旬にビクトリアを発った。

 40余年過ごした第二の故郷とも言えるトロントは、「異民族融合の街」の別名に恥じない賑やかさが一層際立ち、TIFF(トロント国際映画祭)の開催中だったこともあり、街の中心に出ると、ふと目まいを起こしそうなほど活気に満ちていた。それは予想していたことではあった。だが海に囲まれたこの穏やかなバンクーバー島の、州都市とは言え決して慌てない街の流れに慣れつつある者には、時にひどく疲れを感じたことも事実だった。

 翻訳本の紹介や経緯は、当紙の8月17日号にご紹介頂いた通りで、ボランティアの翻訳者や各方面でお手伝い下さった人々20人程と共に、2年の歳月をかけ仕上げたものである。すでに英語の原本は5年前の2012年に上梓されながら、日系カナダ人、戦後移住者の人口が一番多いトロント方面では、全くと言ってよいほど知られていなかったのだ。だが私が知る限りでは、著者自身が足で歩き、これ程詳細な情報を集めた日系史本は他にないと言っても過言でないことを知り、「是非日本語の読者に」と思い翻訳プロジェクトを立ち上げたのである。

 400頁にものぼる分厚い原本は、例え英語を母語とする人々でも、完読する何らかの理由がない限り手に取って読み込むのははばかれるからだろう。まして日本語を第一言語とする人々には、英語の読み書きに不自由がないとしても、余程強い目的意志がなければ「読んでみようか…」と思えないのは当然と言えよう。

 だが後者の人々には和訳されていれば、最初はパラパラと目を通し斜め読みをしながらも、気になった箇所を行きつ戻りつしながら日系史を学ぶことは容易である。果たして今回トロントの日系文化会館における2回にわたるブック・セッションでは、日系人はもとより(原本も2017版を再上梓)、戦後移住者の間で非常にポジティブに受け入れられた。「この本を読んでもっとカナダの日系史を勉強したい」との声が多く寄せられたのは本当に嬉しかった。

 中には「日系シニア(一世、二世の方)の方々がたくさん会場にいらっしゃったのですが、ほとんど日本語が聞こえてこず戦争の爪痕をこんな所で感じました。と同時に、カナダでの日本文化、日本語の継承は戦後の移民である私たちに掛かっていると思い、子どもへの日本語教育により力を入れたいと思います」との意見も聞かれ、思わぬ波紋もあることに驚いた。

 多くの方々のお力を借り、2年にわたる翻訳プロジェクトが無事に終わったことに感謝するとともに、この本を一度手に取って分厚い本自体(440頁)と、その内容の重さを体感して頂きたいと熱望している。

 バンクーバー方面では日系プレースの本屋で英語原本、翻訳本購入可能。$29.95(Tax込)

 またはメールK-m-s@post.comを頂ければ郵送料別で送付可能。

サンダース宮松敬子 
フリーランス・ジャーナリスト。カナダに移住して40数年後の2014年春に、エスニック色が濃厚な文化の町トロント市から「文化は自然」のビクトリア市に国内移住。白人色の濃い当地の様相に「ここも同じカナダか!」と驚愕。だがそれこそがカナダの一面と理解し、引き続きニュースを追っている。 URL:keikomiyamatsu.com/
Mail:k-m-s@post.com