第19話 母になる覚悟

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2019年5月30日 第22号

 4歳年上の私の都合で子供を産む時期を決めた私たち、ダダさんには、父親になる覚悟はできていないのを私は知っていた。だから、ダダさんに対して、期待をしないように自分に言い聞かせていたし、日本の家族のサポートなしの出産という事で、私は、大きい不安を抱えていた。

 でも、私ったら、すごく欲しかった子供を幸いにもすぐに授かったくせに、19歳から吸っているたばこがどうしてもやめられない。何回も禁煙を試みるも、また吸い始めるの繰り返し。自分の母親になるという自覚のなさ、弱さにすごく失望して、もっと自分の事が嫌になった。そんなダメママの私のお腹の中に、やってきてくれた赤ちゃんは幸いにも順調に育ってくれた。

 ただ私の体重だけはものすごい勢いで増えていったけどね、顔、足それからお尻もパンパン状態、まさにビール樽妊婦。妊娠するとすぐ、母は日本のマタニティ雑誌を送ってくれた。これにはかなり助けられた。超音波をしてもらって、さっそく赤ちゃんが女の子である事を教えてもらった。第一子は絶対女の子がいいって思っていたから、すごくうれしかった。

 でも、カナダでの初めての妊娠、日本とカナダでは全然考え方が違うからすごく戸惑った。例えば、腹帯なんてないし、妊娠線クリームとかも見ない。妊婦の女性は、バリバリに仕事をしたり運動もするし、おしゃれもする。周りの人の妊婦に対する対応も全然違う。それから医療システムの違い。このカナダの保険は、医療費は全額カバー、薬代、歯医者は別。という事で、ただなのはいいんだけど、医療サービスがとにかく雑。帝王切開でも3日で退院させられるし、普通分娩であれば最悪だと次の日に退院という始末。未知の出産という事で、すごく心細かった私は、日本人の看護師の人がボランティアでやっているマタニティーグループを見つけた。そこで、私と同じような境遇の何人かの日本人の友達ができた。やっぱり出産、子育てを異国でするというとても不安な時、一緒に頑張っていく友人が私は欲しかった。移民して2年弱、妊娠も後期に差し掛かったころ、私はまだ自分の殻に閉じこもって、ダダさんの家族とは心を通わせる事ができなかった。文化の違い、価値観の違い。

 でもある事をきっかけにそれも随分良い方向へその後向かっていった。それは、妊娠後期になると、北米ではベイビーシャワーといって家族、親せき、友人などが集まってパーティーを開く風習がある。そのパーティーをダダさんのお母さんが主催してくれた。私には、その頃親しい友人が全くいなかったから、親戚、そしてその友人たちがいっぱい来てくれた。その頃私たちは貧乏だったから、出産準備の費用もままならない。お母さんは“結婚式も出てないし、結婚お祝いもあげていないから、今回は私たちが赤ちゃんに必要なものを全部揃えるから何も心配しなくていい、そして出産後は何かと大変だから、うちに来て赤ちゃんの事だけ考える状態にしておけばいいから”と言ってくれた。そんなやさしい言葉をかけてもらい、自分は恥ずかしい気持ちになった、なぜかと言うと、ずっと私はダダさんの家族に日本人だから嫌われていると思っていたから。ダダさんの家族、特にお母さんは、とても物事をはっきり言う人で、飾り気が全くない、だから、私に対しても最初から何の建前的な言葉もなくて、それで私は勝手に嫌われていると思い込んでいた。

ドナルド涼子
BCRPA Fitness Presenter,Yoga Teacher.
48歳、愛知県出身、
2016年ベストインストラクター賞を受賞。43歳の時に、ボディービルのビキニコンペティションを趣味として始め、優勝、上位入賞する。フィットネスプロフェッショナルへの講習、地域の学校でのヨガ、フィットネス指導、心と体の健康と幸せの為の講演活動を行っています。
こんな肩書を持つ私ですが、若かった頃は、デブ、ネガティブ、ずっと自分の事が大嫌いだった。このコラムでは、そんな私が、どうやって健康で幸せな今の自分に変身したかのお話です。
涼子のフィットネスプログラムは、YouTubeもしくはNikkei TVにてご覧いただけます。
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