第23話 小さな幸せ

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2019年7月4日 第27号

 初めての海外での出産を経験し、私はどんどん強い女性になっていった。

 1か月いろいろ手伝ってくれた母も日本に帰り、忙しくしているうちに、子育てにもだんだん慣れてきて、自分のペースをつかみだした。でも、そんな私にはもう一つ試練が待っていた。

 当時、ダダさんはずっと子供が欲しくなかった、でも年上の、私の都合で私は子供を産む決心をした。だから、どんなにつらくても頑張る覚悟を私はしていた。まだ若くて遊びたいダダさん、週に1〜2回は必ず友達がうちで集まり、パーティーをする。産後間もない私となよみのことなど、彼らは全くお構いなし。大体いつも深夜3時ごろまでワイワイ、その横で私は夜泣きをして起きたなよみにおっぱいをあげる。そんな状態がずいぶん続いた。マタニティーブルーが強かった最初の頃は、ストレスをため込んで、いろいろなことにすごく腹が立って喧嘩をいっぱいした。でも、唯一の救いだったのが、その頃できたママ友達と、子供の悩みを話し合ったり、旦那の文句を言いあったりすること。そうやって私なりに気晴らしをすることで、私は海外での子育てという人生のチャレンジを乗り切っていった。

 4歳年下の、エビの行商人とカナダで結婚…全ては、自業自得とはいえ、結構大変な新婚生活、初めての育児をカナダで何とか乗り切っていた私。なよみが1歳になるころ、そんな私に、とてもうれしいことが起こった。それは、あのおんぼろ屋敷から引っ越すことになったのだ。やっとあのジャンクで、毎日マリファナのにおいがするネズミの糞だらけの屋敷から脱出できる、今度こそ結婚して初めて、まともな普通の暮らしができると思うと私はめちゃくちゃうれしかった。

 さすがのやんちゃ坊主のダダさんも、なよみが1歳になる頃には、父親としての自覚もちょっと出てきたみたい。しかもその頃、ダダさんの仕事も一人前の大工さんとして、順調に行き始めていたからなおさらだ。私たちはもっと環境の良いノースバーナビーの、築70年以上の古い家だったけど、ネズミの出ない、以前に比べたら断然“まし”な家に引っ越すことになった。上の階には2ベッドルームと窓からグラウスマウンテンの景色が見える、ぼろくて古いキッチン、おんぼろトイレとリビングルーム、ベースメントにもう一つの小汚いベッドルームとランドリールーム。そしてこの家には素敵な裏庭があって、ハスキー犬のアイス君が走り回る十分なスペースと、家庭菜園まであった。菜園には、もともとイチゴの苗があったみたいで、私たちの引っ越した6月にはきれいな緑色をしたイチゴの苗がいっぱい生えていた。

 そんなわけで、ドナルド一家総出で庭の畑を耕し、レタス、グリーンピース、トウモロコシ、トマト…など色々な野菜を植えた。私にとって、この小さなぼろ屋は、まさに“幸せの家”、カナダに来て初めて、私は、小さな幸せを見つけた。

ドナルド涼子
BCRPA Fitness Presenter,Yoga Teacher.
48歳、愛知県出身、
2016年ベストインストラクター賞を受賞。43歳の時に、ボディービルのビキニコンペティションを趣味として始め、優勝、上位入賞する。フィットネスプロフェッショナルへの講習、地域の学校でのヨガ、フィットネス指導、心と体の健康と幸せの為の講演活動を行っています。
こんな肩書を持つ私ですが、若かった頃は、デブ、ネガティブ、ずっと自分の事が大嫌いだった。このコラムでは、そんな私が、どうやって健康で幸せな今の自分に変身したかのお話です。
涼子のフィットネスプログラムは、YouTubeもしくはNikkei TVにてご覧いただけます。
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