第44回 神のみぞ知る大統領選の勝利者

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ジコチュウ大統領 

 昔から人が口にする「無理が取れば道理が引っ込む」という諺は、まさにトランプ大統領(74歳)のためにあるのではないかと、2016年以来私はずっと思ってきた。

ホワイトハウスのバルコニーに立つ大統領 Photo © バンクーバー新報
ホワイトハウスのバルコニーに立つ大統領 Photo © バンクーバー新報

 もちろん何処の国の指導者を見ても分かるように、それぞれに長所短所があり「十人十色」。特に政治の世界では、同じ党派と言えども全員の考えが等しく一致するなどはあり得ない。それは分かるのだが、それにしても隣国のあの支離滅裂な大統領の言語や行動は説明のしようがない程ひどい。 

 どうしようもなく“ジコチュウ”で、得意の“自画自賛”が如実に表れたのが、二週間余り前(10月29日)にオハイオ州で行われた第一回大統領選討論会であり、COVID-19に罹患したことが分かってから後の一連の行動である。

 にもかかわらず、その指導者を熱烈に支持する米国民が、白人以外にも多数いるのは周知の通りで、アメリカ社会が一枚岩ではないことを物語っている。現時点では、彼が再選されるか否かは神のみぞ知るである。

退院後初めてホワイトハウスで開いた集会(10日)。白人以外にも黒人、ヒスパニックの人々が多数集まったが、ソーシャル・ディスタンスなど何のその!Photo © バンクーバー新報
退院後初めてホワイトハウスで開いた集会(10日)。白人以外にも黒人、ヒスパニックの人々が多数集まったが、ソーシャル・ディスタンスなど何のその!Photo © バンクーバー新報

 政権を取って以来、多くの閣僚が去来した。その中で政治理念など皆無、昨日と今日で言っていることが違うなどは日常茶飯で、そんな姿勢で国際社会を振り回して来た彼の行動の全ては、「自分の損得勘定で動くことにある」— そう語るのは、2018年4月から一年3か月ほど、国家安全保障担当補佐官として大統領に仕えた白髭頭に白い口髭が印象的なジョン・ボルトン氏。

国家安全保障担当補佐官として大統領に仕えた白髭頭に白い口髭が印象的なジョン・ボルトン氏 Photo © バンクーバー新報
国家安全保障担当補佐官として大統領に仕えた白髭頭に白い口髭が印象的なジョン・ボルトン氏 Photo © バンクーバー新報

 6月に出版した回顧録(The Room Where It Happened和訳『それが起きた部屋』)の中にこもごもと書かれていると幾つもの書評が採り上げている。

 中でも「突飛で驚くほど無知」である例として、英国が核保有国である事を知らなかったり、フィンランドはロシアの一部かと側近に聞いたり等のエピソードには笑ってしまう。

ジョン・ボルトン氏が6月に出版した回顧録(The Room Where It Happened和訳『それが起きた部屋』) Photo © バンクーバー新報
ジョン・ボルトン氏が6月に出版した回顧録(The Room Where It Happened和訳『それが起きた部屋』) Photo © バンクーバー新報

トランプ一族

 また7月には、大統領の姪で臨床心理学の博士号持つMary L. Trump(大統領の兄の娘)が、一族にまつわる詳細な暴露本(Too Much and Never Enough-和訳『世界で最も危険な男』)を出版した。彼に関する本はすでにあまたあり、奔放な女性関係やビジネス面での醜聞などにもうウンザリと感じている人も多い。だがある書評によると、姪が書き残したかったのは「大統領の人となりは常習的に嘘つきで救いがたいことは事実だが、彼を支えてきた廻り取り巻きも同じくらい救いがたく罪深い言っている点にある」という。

Mary L. Trumpが出版した、一族にまつわる詳細な暴露本(Too Much and Never Enough-和訳『世界で最も危険な男』) Photo © バンクーバー新報
Mary L. Trumpが出版した、一族にまつわる詳細な暴露本(Too Much and Never Enough-和訳『世界で最も危険な男』) Photo © バンクーバー新報
大統領の姪で臨床心理学の博士号持つMary L. Trump Photo © バンクーバー新報
大統領の姪で臨床心理学の博士号持つMary L. Trump Photo © バンクーバー新報
ビクトリアの本屋にもトランプ大統領に関する本がズラッと並んでいる Photo © バンクーバー新報
ビクトリアの本屋にも大統領に関する本がズラッと並んでいる Photo © バンクーバー新報

 大統領の現時点での妻は三番目で、元モデルであった24歳年下のメラニア夫人(50歳)。二人の間には14歳になる息子Barron W Trumpがいるが、語られて久しい父親の一連の極評を、どの様に受け止めているのだろうか。

大統領の現時点での妻、メラニア夫人との間の14歳になる息子Barron W Trump(左端) President Trump Returns to D.C., Photostream of The White House
大統領の現時点での妻、メラニア夫人との間の14歳になる息子Barron W Trump(左端) President Trump Returns to D.C., Photostream of The White House

 彼の祖父(大統領の父親)にあたる不動産業者だったフレッド・トランプも、「勝つためには手段を選ばない人物」であったと評されている。もちろんBarron はまだ若く将来は不確実だが、祖父、父の二代に渡る血脈を充分に受け継ぎ、トランプ一族の一人としてゆるぎない社会的地位を維持して行くのだろうか。

アメリカ女性と日本女性

 泣いても笑っても11月3日までに後19日。投票妨害、支持者の衝突、郵便投票の不具合など諸々の障害が予想されている。これからも成り行きに目が離せないが、この一ヶ月ほどニュースを熱心に追っている中で、改めて驚かされるのは、大統領の取り巻きの女性たちが、メラニア夫人と似たり寄ったりの髪型、体形であることだ。

 胸まである金髪(あるいはそれに近い色)の長髪を風になびかせ、それを優雅にかき上げながら大統領の後ろをピンポイントのハイヒールで颯爽と闊歩している。“色好み”で知られる彼の選択が如実に現れていて「なるほどなぁ~」と思わず苦笑してしまう。

 彼女たちのその堂々とした態度は、大統領が目の敵にしているCNNのアンカーウーマンたちも同じこと。そして揃いも揃って早口である。

CNNのアンカーウーマンの一人-Julia Chatterley

 それに比べ、日本のテレビのアンカーを務める女性たちの、時には歯がゆくなる程に楚々としていること!それが良いとか悪いとかは一概に言えないことは承知である。

 だがそれでも思うのは、菅義偉新内閣の女性閣僚はたった二人、主要7カ国(G7)の中での女性管理職比率は最下位。この数字が示す日本の男社会の現状には正直ホトホト情けなくなるのである。

 

サンダース宮松敬子 
フリーランス・ジャーナリスト。カナダに移住して40数年後の2014年春に、エスニック色が濃厚な文化の町トロント市から「文化は自然」のビクトリア市に国内移住。白人色の濃い当地の様相に「ここも同じカナダか!」と驚愕。だがそれこそがカナダの一面と理解し、引き続きニュースを追っている。
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