「カナダで出会った新渡戸稲造」

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台湾で大仕事、国際連盟でも!

 この「カナダで出会った新渡戸稲造」ですが、バンクーバー新報に2017年6月から7回ほど掲載されました。その後、新たな発見や付け加えたいこと、そして少し直したいところなども多々見つかり、今回の新しいオンライン版バンクーバー新報に改めて投稿したく、よろしくお願いいたします。

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 武士道を出版した翌年1901年、新渡戸稲造は台湾総督府の役人となり、技師として砂糖キビの改良に乗り出します。当時の台湾は日本の植民地であり、農業開発が大きな課題でした。そこで農学の専門家である新渡戸稲造に白羽の矢が立ちます。これは当時の台湾総督府の児玉源太郎と後藤新平による強い要請でした。台湾の農産業、特に糖業はひどい状況で、新渡戸稲造は念入りに調査し、風土に合った質の良い砂糖キビを外国から取り寄せます。戸惑う農民をやさしく説得し、古い製法を改善し、その後台湾の製糖産業は大発展を遂げることになり、新渡戸稲造は「製糖の父」として語り継がれてきたとのこと。素晴らしいですね。

稲造のおかげで台湾の製糖産業は大発展を遂げることになり、新渡戸稲造は「製糖の父」として語り継がれてきたそうです。 Photo © 矢野修三
稲造のおかげで台湾の製糖産業は大発展を遂げることになり、新渡戸稲造は「製糖の父」として語り継がれてきたそうです。Photo © 矢野修三

 台湾南部の高雄には日本統治時代の製糖工場跡があり、今は糖業博物館。そこに新渡戸稲造の胸像があると、台湾にいる生徒が教えてくれたので、胸像に会いたく、2016年に台湾を訪れ、高雄まで足を延ばしました。館長さんからいろいろ話を聞いて、台湾に親日的な人が多いのは新渡戸稲造がそのきっかけを作ったのだ、と強く感じました。2014年にUBCの新渡戸ガーデンに台湾の人から稲造の胸像が寄贈されたのも大いに頷けます。

高雄にある糖業博物館 Photo © 矢野修三
高雄にある糖業博物館 Photo © 矢野修三

 日本に戻った稲造は再び教育者として活躍します。1906年に第一高等学校(現東京大学教養学部)の校長に就任。教育者らしくない教育者として教育界に新風を吹き込みましたが、一部の学生や文部省などと意見の衝突もあったようです。そのころの日本は日露戦争の勝利などですっかり浮かれており、学生の間でも野球熱が高くなり過ぎ、早慶戦が中止になるなど社会問題になっていたようです。

 第二回目に書いた「出会いのきっかけ」の「野球害毒論」(朝日新聞)がこの時でした。でもなぜあのようなコメントを出したのか、どうしても理解できず、国際人・新渡戸稲造としては、かなりマイナスだったのでは、と思えてなりません。本人もあの世で「野球害毒論」だけは後悔しているよ、と勝手に想像してしまいました。女子教育にも力を注ぎます。1918年に創立された東京女子大学の初代校長に就任し、文筆家としても大活躍、ますます名声を高めました。

 大きな転機が訪れます。第一次世界大戦が終わると、1920年に世界平和を目的として国際連盟が作られました。日本代表として新渡戸稲造にまた白羽の矢が立ち、事務次長に就任。58歳、今度はスイスのジュネーブに向かいました。

 スウェーデンとフィンランドの真ん中にあるオーランド諸島は昔から紛争が絶えず、第一次世界大戦終了後も両国間で領土問題が起こり、一触即発。出来たばかりの国際連盟が調停役を務めました。その調停は、フィンランドが統治するが、言葉や文化はそのままスウェーデン式とし、オーランド諸島に高い自治権を与える。これが「新渡戸裁定」です。状況を熟慮し、白黒をはっきりさせず、寛容さを加えた、いかにも日本的な裁定として有名であり、オーランド諸島に平和をもたらしてくれた人として、今でも尊敬されているとのこと。フィンランドでも新渡戸稲造を記念して毎年「桜祭り」が行なわれていると聞きました。さらにユネスコの前身となる知的教育委員会を立ち上げ、アインシュタインやキューリー夫人を引き込んだのも新渡戸稲造であり、当時、国際連盟では「ジュネーブの星」として高い評価を受けていたとのこと。うーん、すごいですね。

 しかしながら、新渡戸稲造が台湾や国際連盟でこのような素晴らしい大仕事をしたことなど、日本ではほとんど知られていません。なぜ歴史授業の中で教えないのか、何か理由でも…、とても残念でなりません。

糖業博物館にある新渡戸稲造の胸像 Photo © 矢野修三
糖業博物館にある新渡戸稲造の胸像 Photo © 矢野修三
カナダのバッチを置いてきました Photo © 矢野修三
カナダのバッジを置いてきました Photo © 矢野修三

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