第47回 ドナルド・トランプ氏よ、さようなら!!!

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二回にわたる弾劾追訴

 国連人口基金(UNFPA)https://memorva.jp/ranking/unfpa/who_whs_population.phpによると、世界の総人口は77億9500万人(2020 年度)とのこと。想像を絶する数だが、それだけの人間がこの地球上に住んでいるとなれば、当然ながらその数だけの人の思いがあることになる。そして我々は、長所/短所を各々併せ持ちながら、人と人との輪の中でお互いに寄り合って暮らしているのだ。

 一人でコツコツと成果を上げることが好きな人、グループで仕事をすることを好む人、また裏方に廻って参謀役としての居場所を見つけ能力を発揮する人等など。人にはそれぞれ持って生まれた資質と言うものがあり、適材適所にはまることが出来ればとてもラッキーなことである。

 だが例えリーダーとしての資質を持っていたとしても、その手腕や思想が一人よがりであった場合、「烏合の衆」に支持されることによって自信をつけ、とんでもない方向に導いてしまうのは何とも恐ろしいことである。

 歴史を振り返れば、第二次世界大戦でホロコーストを引き起こし、600~1100万人とも言われるユダヤ人を虐殺したアドルフ・ヒットラーがその代表であり、最も卑近の例では、言わずもがなのドナルド・トランプ元大統領である。

 前者は「真実ではないとしても一方的に自分だけを褒め、責任は敵に負わせる」ことを宣伝の手段とすると述べていたそうだが、トランプ氏の場合は、SNSで多くのフェイクニュースを拡散し支持者を扇動し続けた。

 新年になった6日には、彼を崇拝する人々が暴徒化し連邦議事堂を襲撃した事件に絡み、下院が大統領を弾劾(だんがい)する訴求案を可決した。すでに2019年に行われた一回目の弾劾は、ウクライナ疑惑を巡って追訴されたものだったが、今回は反乱扇動への疑惑が原因。周知の通り、一人の大統領が二回も弾劾追訴されるのは米国史上初めてである。

 これによって閣僚や高官の辞任が相次いだり、元カルフォルニア州知事で俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏のような有名人が、怒り心頭の思いをYouTubeに載せて公開したり、はたまたソーシャルメディアの事業者は、暴力を更に誘発する恐れがあるとして次々にトランプ氏からの発信を停止した。

 しかしこれに関しては、表現の自由に反しないかとの議論があるのだが、トランプ氏は一時「では自分で会社を立ち上げる」などと嘘吹いていたとも伝えられる。

息子への影響

 そうした一連の醜聞や事態の流れの中でも、特にQアノンなどと言う得体の知れない極右の陰謀論集団などは、何処までもトランプ氏に追随する構えを見せている。そう簡単に彼等の勢力が静まるとは考えにくく、今後の動きに不穏さが付きまとう。

 この原稿を書いている17日(日)の時点では、20日(水)の大統領就任式が無事に終わるか全く不透明であるが、トランプ氏は式典には「参加せず」との意思表示をしている。

 こうした身勝手な行動を見るにつけ、4年前の大統領就任式に、ペンシルベニア通りを何やら億劫そうに両親と共に歩いていた10歳のバロン少年を思わずにいられない。

2016年大統領就任式パレードでのバロン少年©︎ Keiko Miyamatsu Saunders
2016年大統領就任式パレードでのバロン少年©︎ Keiko Miyamatsu Saunders

 その彼も今や多感な14歳のティーンエイジャーに成長しており、その心中は如何ばかりであろう。父親が自分の祖国でもあるアメリカの政府から二度にわたり弾劾されるのを見聞きし、今彼の胸中をよぎるのは何であろうか。

 息子には聞かせたくない父親の女性絡みの醜聞も含め、母親(メラニア夫人)の庇護のもと覆い隠されているのかもしれない。信じがたいことだが例えそうだとしても、長じてから知るであろう白人至上主義の父親の、自国民に対する不平等な取り扱いや、自国を二分し市民戦争にもなり兼ねなかった身勝手な行動をどう思うのだろうか。このテクノロジーの時代に情報はいくらでも入手出来る。

 だが一方トランプ氏自身が彼の父親から身を持って教えられた「拝金主義」を”立派に“引き継ぐのかとも考えられるが、数年後の成長ぶりが気になるところだ。

それでもトランプ氏に戻って欲しいですか

 当たり前なことながら、何処の国の政治や政治家を見ても完璧な国などありはしない。だが少なくとも民主主義を標榜する国に住む者には、どの政党やどの政治家を選ぶかは個人の自由である事は嬉しい。それ故に、Qアノンのようにトランプ劇場の主人公を支持する過激派の人々以外にも、一般人の中に彼に期待する者がいるのは当然である。

Qアノンの指導者ジェイコブ・アンソニー・チャンスリー容疑者 ©︎ Keiko Miyamatsu Saunders
Qアノンメンバーのジェイコブ・アンソニー・チャンスリー容疑者 ©︎ Keiko Miyamatsu Saunders

 だからこそ大統領選の結果は接戦だったのだが、ある統計によるトランプ氏の支持者の多くは、白人労働者、農業従事者、福音派のキリスト教信者、軍人・退役軍人、極右団体のProud Boys(白人至上主義を掲げる団体)などが多いと言う。

 去年一年間は、コロナの問題と同時に大統領選の話題が後を絶たなかった。筆者の友人・知人の間でもこの二点にもっぱら絞られた感がある。必然的に日本人移住者との話題もそれに集中されたのだが、興味深いのは彼等の中にもトランプ支持者がかなりいることだ。

 ある人は「偏った報道をしているメディアを信用することは出来ない」と言い、「確かにトランプの言うように票は盗まれたのだ」とハッキリ言う人もいたり、「台頭してくる中国に太刀打ちできるのはトランプでなければだめ」と言う人もいる。

 世界がどの様に反応しようが、共産主義の旗印のもと世界を覇権しようとする中国は、日本に取っても大変な驚異である。そのため彼等は「バイデン新大統領では弱過ぎる」と。

 もちろんそれは痛いほどよく分かる。だがつい先日新大統領は、ホワイトハウスに新設する「インド太平洋調整官」というポストに、米コンサルティング会社のアジア・グルーで活躍するCEOカート・キャンベル氏を起用すると発表した。氏はオバマ政権時代の2009~2013年まで東アジア・太平洋担当の国務次官補を務め、知日派として知られているとも聞く。決して楽観視は出来ないが、大いに期待したいと思う。

 新政権はまずコロナの抑え込みから始まり、ズタズタになった国内の政治、経済、社会、国際関係の見直しなど、どれを取っても一筋縄では行かない課題がてんこ盛りである。巨大な荒波の中での船出だが、女性の副大統領を選び、また多くの要職に女性を起用しているバイデン新政権に希望を託す人は多いいであろう。

 いつか「それでもトランプ氏に戻って欲しいですか?」と聞ける日がある事を筆者は祈念している。

サンダース宮松敬子 
フリーランス・ジャーナリスト。カナダに移住して40数年後の2014年春に、エスニック色が濃厚な文化の町トロント市から「文化は自然」のビクトリア市に国内移住。白人色の濃い当地の様相に「ここも同じカナダか!」と驚愕。だがそれこそがカナダの一面と理解し、引き続きニュースを追っている。
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