墓園を歩けば ~投稿千景~

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エドサトウ

 早朝にウオーキングに出かける。薄暗い南の空に上弦の月が美しく輝くのを見れば、何か良いことがあるような小さな感動を覚える。

 少し登り道になっているフレイザーの大通りを急ぎ足で歩くのは、少しきついけれど、日増しに足に筋力がついてくるのか、身体が以前より楽なことを感じる。

 ハーハーと息をしながら歩くのは体内にたくさんの酸素を取り込もうとしているわけだから脳にもいいわけである。

 飛行機機内の気圧の変化による実験があって、低い酸素濃度の密室の中で仕事をしていると脳のはたらきが弱くなりミステイクが多くなるということは、認知症の人も運動を多くすれば脳の活性化につながるかもしれない。だから、少し高いところにある墓園まで歩き、帰りに遠くに見える山並みを見ながら折り返し約4kmの道のりを歩けば、頭の中もスッキリ元気になり、やる気になるのは、脳に酸素の多い血液が巡回しているからかもしれない。

 墓園の奥の方にカナダに訓練生として一緒に来たKのお墓がある。お墓と言っても芝生の中に石の銘板が埋め込まれていて、回りはほとんどが平面になっているお墓だから、緑の芝庭の公園のように見える。

 歩きながら友のことを思う。Kは僕と同じガーデニングの仕事を自営でしていたが、彼は英語が達者なので、農薬散布の資格も取得していたし、しかもガーデニングの動力機械の修理に詳しく自分でほとどんど修理をする。僕より年下だけれど、人生の途中からガーデニングの仕事を始めた僕から見れば、先生のような奴で、彼から多くのことを教わったという気がして感謝の念にたえないのである。

 かれこれ7年ぐらい前のこと、酒もタバコもやらない彼には珍しく調子が悪くなり彼からの電話で、「胃にゴルフボウル大の癌があるらしい。ステージ4でキモサラピーをやらんといかんらしいけど、俺は、キモサラピーではなく、自然療法でやってみようと思うけど、どう思う?

 キモサラピーをした人の話を聞いても大変らしいし、それで完治する訳でもないらしいからなあ」「僕がどちらが良いと進めることはできないけれど、自分が良いと思う方に決めたらいいのではないか?キモサラピーも最後まで続けるのも大変らしいから、自然療法も一つの選択かもかもしれないなあ」と僕が返事をしたわけではないが、彼は自然療法を選択して、漢方薬と人参ジュースに挑戦をして、胃癌を克服したが、その時点で癌は他に転移していて、彼もしだいに元気が無くなり、食欲ももなくなりすっかり痩せてしまった。

 僕は彼からガーデニングの機械を買うこととして代金を先払いをしていたが、自宅の物置小屋に新たに機械を置く場所も無いので、そのまま彼のガレージに置いたままにしておいたら、そのことが気になったのか、最後の最後に彼から電話があり「サトーさん、機械を持っていかんと?」という。

 それでその翌日に機械を引き取り、リビングルームにいる彼との窓越しに手を振り挨拶を交わしたのが最後であった。

 その晩、彼は、救急車で病院に運ばれて他界した。癌の発病から一年と数か月の病との戦いであったが、高校時代マラソンで鍛えた東北男子の屈強な身体も癌には勝てなかった。

 日本のノーベル賞を受賞した本庶佑(ホンジョウ タスク)氏は研究でがん細胞から特定の免疫細胞に出されるガンを攻撃するなという信号をストップするということで、ガンの拡散を防ぐという薬を開発された。これが一般化すれば、ガンは怖くないというものらしい。また、アメリカのノーベル賞学者 ポーリング博士は、免疫力アップするために、バイタミンCを1日1000㎎取りなさいと言われている。つまり、バイタミンCの多い野菜とかくだものを食べなさいということであろう。

 K君は岩手県の出身である。前回、日本に行った折に東北新幹線の車窓から彼の住んでいた東北の山河を眺めながら彼を偲んだものである。

 墓園を歩きながら、二月の朝空はみようだと思う。天空は青空だが東の空に厚い雲があるのか旭は西の空を照らし空の雲が赤紫に染まっている。西の空の朝焼けは、この墓園からはるか彼方の故郷日本の朝焼けにつづくのだろうか?