153「ロコモ」が先か、「認知症」が先か

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ガーリック康子

 最近、新型コロナウイルス感染予防のために、外出する機会が減り、運動不足 になっていませんか?

 運動不足は、ロコモーティブ・シンドロームを招くきっかけになります。

 ロコモーティブ・シンドローム=運動器症候群、通称「ロコモ」。これは、運動器、つまり「体を動かす器官」である骨、関節や筋肉などの機能が低下し、「立つ」「歩く」といった動作が難しくなり、日常生活に支障が出る状態をいいます。

 この「ロコモ」には、大きく分けてふたつの原因があります。ひとつは、整形外科で治療する疾患で、脊椎の病気、関節の変形症、下肢の骨折などが引き金になって、「ロコモ」に陥る場合です。もうひとつの原因は、体、特に運動器の衰えです。循環器や消化器と違い、運動器は自分の意思で動かす器官のため、動かさないと衰えてしまいます。動きが悪くなると、動かしたくても動かなくなり、ますます運動不足になるという悪循環に陥ります。「ロコモ」は、年齢とともに増え、生活習慣病を悪化させ、要介護の引き金にもなるため、予防や対策がとても重要です。

 それでは、どんな状態を「ロコモ」というのでしょうか。それを調べるために、運動器が衰えていないかをチェックする簡易テスト、「ロコチェック」があります。チェックするのは、1)片脚立ちで靴下がはけない、2)家の中で躓いたり滑ったりする、3)階段を上るのに手すりが必要である、4) やや重い家事(掃除機かけなど)が困難である、5)2kg程度の買い物(1ℓのジュースや牛乳2本分程度)を持ち帰るのが困難である、6)続けて15分くらい歩けない、7)横断歩道を青信号で渡りきれない、の7項目。ひとつでも当てはまる項目があると、「ロコモ」の心配があるそうです。(注:転倒の危険があるため、無理だと思う項目は試さないでください。)

 さて、運動器の衰えが「ロコモ」ですが、脳の働きが衰え、日常生活に支障をきたす状態が「認知症」です。「認知症」になりやすくなるリスク因子はさまざまで、生活習慣病や喫煙、過度の飲酒、難聴などに始まり、「ロコモ」の原因でもある運動不足や、社会的孤立もそのリスクと考えられています。感染予防のために、ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)が奨励されていますが、それが行き過ぎて社会的に孤立してしまうと、認知機能の低下、ひいては「認知症」になりやすくなります。逆に、「認知症」になると、 転びやすくなるうえ、運動不足になりがちで、「ロコモ」に陥りやすくなります。

 因みに、厚生労働省のデータでは、介護が必要になった主な原因を介護度別にみると、要支援者では関節疾患が17.2%で最も多く、高齢による衰弱がそれに続いて16.2%、骨折・転倒が15.2%となっています。要介護者では、認知症が24.8%、次いで脳血管疾患が18.4%、さらに、高齢による衰弱が12.1%となっています。(厚生労働省2016年国民生活基礎調査のデータより)

 新型コロナウイルス感染症の流行が広がるまでは、自由に外で運動をすることや、親しい人と話したり食事に行くことが当たり前にできました。しかし、現在は、感染の機会を減らすために外出を控える生活が続いています。感染を心配するあまり、ほとんど家に籠った生活を送っているため、「ロコモ」の状態になり、足腰が弱る人や体調を崩す人も出てきているようです。足腰が弱ると、家の中で転倒して骨折する頻度も増します。骨折以外にも、転倒により様々な合併症が引き起こされたり、既往症が悪化したりします。「認知症」もその例外ではありません。「ロコモ」が転倒の原因になり、逆に、転倒が「ロコモ」を招くこともあり、介護が必要になることや、状況により、死亡につながることさえあります。

 「ロコモ」も「認知症」も、予防のキーワードは「運動」です。激しい「運動」をする必要はなく、家の中でもできる程度の「運動」で十分です。筋肉を使う、関節の曲げ伸ばしをする、骨に刺激を与えるなど、無理のない範囲でとにかく使うことが予防に繋がります。体の中でも硬くなりやすい部位、特に背中や骨盤をしっかり動かして、運動器を錆びつかせないように「手入れ」します。(具体的な「運動」のしかたは、「ロコモ体操」をインターネットで検索すると、参考になる資料やビデオが見つかります。)

 健康寿命を延ばすためにも、無理のない範囲で、日々の「運動」を心がけましょう。