154認知症と予防接種

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ガーリック康子

 2020年3月にWHO(世界保健機関)が新型コロナウイルス感染症のパンデミック宣言を発表してから、丸一年が経ちました。開始時期は異なるものの、すでに各国で予防ワクチン接種が始まっています。

 カナダのBC州では、3月にワクチン接種の第2フェーズに入り、老人ホームなどの介護施設に入所していない80歳以上の高齢者、および、65歳以上の先住民が接種を受けられるようになりました。90歳以上から予約受付が始まり、年齢の高い順に5歳単位のグループで、1週間ごとにより若いグループに移行する予定が前倒しになり、3月20日現在のBC州政府のCOVID-19 Immunization Planの情報では、22日から25日までに、75歳以上の高齢者もワクチン接種の予約を取ることができるようになる予定です。

 ところが、予約受付が始まった第1日目に、BC州で2番目に人口の多い保健局であるバンクーバー・コースタル・ヘルスで、予約の電話が殺到し、回線がパンク状態になりました。そのため、12時間の予約受付時間内に予約ができたのは、州内の保健局を合わせた予約数14,949件のうち、369件にとどまるというハプニングがありましたが、何とかスムーズな予約ができるようになったようです。因みに、BC州で最も人口の多いフレイザー・ヘルスは、州内で唯一、オンライン予約もできたことが功を奏し、初日の予約数は8,722件と、州内で最多でした。(CTVニュース3月9日の情報より)

 同じく第2フェーズでは、第1フェーズで接種を受けていない、新型コロナウイルス感染症治療病棟、集中治療室病棟、外科治療病棟、救急治療室など以外の病院スタッフや、第1フェーズで接種を受けていない専門医などにも接種が始まりました。

 実は、ワクチン接種が始まった当初、新型コロナウイルスに感染すると重症化するリスクが高いとされている重篤な持病がある人や、放射線療法や化学療法などのがん治療を受けている人、臓器移植を受けた人などは、優先的にワクチン接種が受けられるものと考えていました。しかし、コミュニティー通訳として、患者さんやその家族からの担当医への質問を通訳する中でわかったことは、リスクの高い人でも、年齢に応じた順番を待つ必要があるということです。いずれの場合も、リスク要因がさまざまで、何をもって「リスクが高い」という線引きをするかが大変難しいことを理由とした説明がありました。認知症については、診断を受けている人が高齢である傾向が高く、他の疾患や健康上の問題を抱えていることが多いものの、認知症そのものは特にリスクの高い疾患とされていないため、やはり年齢に応じた順番を待つことになります。

 さて、通常、ワクチン接種を受ける際、本人の同意が必要です。ワクチン接種の目的や方法、ワクチンについての情報、接種によって起こり得る副反応などについて、本人が理解し判断した上で、接種を希望する意思表示がない限り、接種は行えません。未成年者だけでなく、成人でも、判断能力がないとみなされ、意思確認ができない場合、接種を行う医師や看護師には決定権はありません。未成年者の保護者、成人の場合は医療措置についてあらかじめ選ばれた代理人が、本人に代わって同意する必要があります。例えば、認知症の診断を受けている人がワクチン接種を受ける際、本人に判断能力がないとみなされていても、代理人による正式な同意があれば、ワクチン接種が受けられます。しかし、ワクチン接種について前もって本人に説明しておいても、説明を受けたことを忘れてしまうこともあり得ます。接種の理由が理解できず、実際に接種する場面になり、本人が抵抗する可能性も考えられます。

 いずれにしても、第4フェーズが終わる予定の6月までには、18歳以上の「成人」がワクチン接種の予約を取ることができるようになります。成人の希望者すべてが接種を受けることができたとしても、18歳未満の子供たちには、まだワクチンがありません。しばらくは、こまめな手洗い、マスク着用、ソーシャル・ディスタンスを取る生活が続くでしょう。

 晴れて、親しい人と集まることができるようになるまで、今しばらく、頑張るしかありません。