日本の科学技術開発の現状と挫折した入試改革(前編)

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2021年8月7日

 桂川 雅夫

1.日本の科学技術開発の現状

 7月17日のNHKの時論公論で、小野倫之解説員から、最近の日本の科学技術に係る学術論文数の低迷についての解説があった。嘗ての(かつての)日本は米国に次ぐ世界第2位の論文発表数であったものが、今や世界第9位にまで転落している。逆に中国は第3位から米国を抜いて今や第1位となっている。その現状に鑑み菅内閣は科学技術の研究開発に、その価値が認められた案件には、来年度から案件ごとに1億円の研究開発の予算措置を検討している旨の説明があった。

 何故日本の科学技術の研究開発が衰退したかは、過去の政府が打ち出した「選択と集中」と云う方針にそって、研究開発の予算を削減した結果、例えば教授が2人退職して、新たに1人の教授が誕生するなどの状態が定着したり、研究者の雇用状態が将来が保証されないものであったりで、研究者のなり手は大幅に減っているとか、又研究設備も老朽化のままであるという様なことに起因しているという。この様な実態を憂うという話は、ノーベル賞受賞者の大隅良典博士などもされていた。工業立国を自負してきた日本にとって大事な技術の開発力の問題で、予て(かねて)からこの様な衰退が指摘されていたのに、当時の安倍内閣はこの様な国の将来にとって大事な事を、国の最重要政策として改革を行なわなかったのかと疑問に思う。その一方では「一億総活躍社会」の標語が実行の具体策もなく、官邸主導の政策として掲げられていた。

 ニュース解説では、仮に一件当たり1億円が支給されるとしても、一部の有名大学だけにとどまる懸念があるとの事だった。そういう日本の現状と比べて、中国にスカウトされた日本の研究者の例として、日本円相当で5億円ぐらいの研究費とか必要な設備やスタッフもあてがわれているという話があった。日本が失地回復を図るのなら、中途半端な予算や対応でなく、十分な予算措置を講じて抜本的な改革を実行して欲しいと願うものである。

(後編に続く)

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