第115回 新聞記事とサーモンの里帰り 

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グランマのひとりごと

~グランマのひとりごと~

 ウアぁー、綺麗! 画面いっぱいに広がった「赤」。それはリッチモンドへ住み着いてから毎年初秋に目にするクランベリー畑の写真だ。

 新報ウエヴ開けて、最初のページ。そこに今年も、クランベリー畑が広がっていた。スティーブストンのNO.6Rd.を南から北へ走ると東側にクランベリー畑が広がり楽しませてくれる。

 ただ、最近どんどんブルーベリーやクランベリー畑が宅地に変えられて行く。

 一言、コメントを新報へ送ったら以下の返信を頂いた。

 「私はNelsonに近いクランベリー畑をチェックしに行きます。ここはまだ開発はされていないので探しに行くのですが、大丈夫そうです。

 クランベリーはきれいですがタイミングが難しいですよね。さらに難しいと思っているのがサーモンです。ミッションのStave Lakeに近い川で15年ほど前かもしれませんが、群れで帰ってくるのを見ました。それこそすごい迫力でした。」

 バンクーバー新報からの返信を受け、報道の仕事は大変だなぁ。41年間新報の仕事をやり遂げた津田佐江子さん、その後をついて今、頑張る編集の人。

 『この花はおれが咲かせたんだ』
 土の中の肥料は
 そんな自己顕示をしない
 おれのような
   相田みつお

 そうですか、偉いなぁ。皆さん、よく頑張る!そうやって、あちこち時期を変えて、散策する。そうでなければニュースになりませんものねぇ。

 そして、その一行から、グランマはスティーブストンのサーモン釣りを思い出したのだ。

 「ホイさん、ホイさん、あのね、あのねぇ」。せぇーせぇー、フーフー言って言葉にならない。

 グランマが台所で仕事中、開け放した玄関から「だだぁ」と人が入って来た。

 「どうしたの?大丈夫?」
 入って来たのは学生生活、最後の夏休みをバンクーバーで過ごすために広島からやって来たグランマのお客さまだ。

 やっと落ち着いた彼が話始めた。彼は一人で我が家からフレーザー川のほとり迄歩いて行った。

 ゆっくり歩けば40~50分、ササッと歩けば30分で川淵に着く。広々とした眺めの良い川淵だ。

 だが、今から数十年前、そこは何もないただ、流れ木の山だった。しかし、兎に角、彼がそこで見たのは、川辺で平然と魚釣りをし、かなり大きなサーモンを普通の人達が釣っている様子だった。

 彼は、其れに驚いて、家まですっ飛んで帰り、私に感動したと報告、それだけのことだ。

 正確にいえば、漁獲できる魚のサイズや数も時期にも規則はある。でも彼に教える知識を、グランマは持っていない。だから彼をただ驚かせたままだった。

 広島出身の青年が、それほど驚き感動した川辺でのサーモン釣り。それは、今から30~40年前、その頃、スティーブストンでは、何だか誰でもやっていたと聞く。

 これも又、随分昔、案内人と一緒にグランマはビクトリアへ行った。町からそれほど遠くない川へ、鮭を観に行ったのだ。

 車から降り、暫く歩くとうっそうと樹々に囲まれた川があった。細い川だった。

 見ると既に赤くなった鮭が沢山泳いでいる。「わぁー、すごーい」。思わず声が出た。

 近くで遠足だろう。かなり沢山の子ども達が遊んでいた。

 ふとみると川辺の大木から太い枝が、川の水面迄下がっている。

 その枝先に、一人少年が登りと言うか下りると言うか、水面まで行き、手を伸ばし、川淵へ泳いで来る鮭を脅かして遊んでいた。

 魚を捕まえるわけではないが、そうして子どもはただ遊んでいた。するとどこからか一人の女性が近づいて、その子どもに優しく話かけた。

 聴いていると「あのねぇ、ここに沢山いる魚は間もなくお母さんになる魚なの、脅かしては可哀そうでしょう?」

 子どもは遊びを止め木から陸へ戻って来た。

 その女性の明るく、又やさしい話し方は印象的だった。後で案内人に聞くと、彼女達はボランティアでシーズンになるとああして、色々な形で子どもと魚と自然を守る人たちだそうだ。

 カナダへ移住でして半世紀、今はもうスティーブストンでサーモンを見ない。町からあんなに近い川で「鮭のお里帰り」に会う事もない。

 今頃、知床の川べりでサーモンをキタキツネ達は捕まえてどっさり、食べているのだろうか?

 自然は一刻も休まず、刻々と過ぎて行く、地球上の全てが、休みなく変わっていくんだよなぁ。何だか淋しい「老婆ぁ」

 許 澄子