234 「一段落」は「いち段落」だよ !

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外から見る日本語

 なかなかコロナ禍終息の兆しも見えてこないが、ワクチン接種カードを見せれば飲食店にもちゃんと入れて、まずは一安心。先日も数人の駐在商社マンと久しぶりのリアル飲み会。テレワーク、在宅勤務もすっかり板ついたようである。先回の「足元」についてのエッセイが話題になり、いろいろ言葉に関して話が膨らんだ。そして、ある人から、「一段落」の読み方について問われた。

 彼は「仕事もやっと一段落したので・・・」こんなメールを送ろうとして困ってしまったとのこと。「一段落」の読み方、てっきり「ひと段落」だと思い込んでいて、「ひとだんらく」と入力しても「一段落」の漢字が出てこず、「人段落」になってびっくりしたとのこと。思わず笑ってしまったが、なるほどである。

 確かに、この「一段落」は昔から誤った読み方が問題になっている漢字熟語の一つである。今から三十数年前、ちょうど小生が日本語教師なりたてのころ、「ひと段落」という読み方が話題になった。当時、そんな読み方は間違いで、正しい読み方は「いち段落」とマスコミも報じていた記憶がある。

 しかし、時代が経つにつれ、最近ではかなりの人が「ひと段落」と読んでおり、若者世代では7割を超える統計もあるとのこと。矢野アカデミーの教師養成講座の受講生の中にもかなりおり、びっくり。この「一」の基本的な読み方は後ろに付く言葉が「音読み」の場合は「いち」であり、「訓読み」は「ひと」である。だから、「一面識」は「いち面識」で、「一休み」は「ひと休み」。それゆえ「一段落」は当然「いちだんらく」である。

 でも、例外もたくさんあり、ややこしい。例えば「一安心」や「一苦労」はルール的には「いち」なのだが、「ひと安心」や「ひと苦労」であり、「一区切り」なども「ひと区切り」。こんな言葉の影響で、「一段落」を「ひと段落」と読む人が増えてきたのであろう。読みやすさも大きなポイント。昨今は慣用読みとして、この「ひと段落」を載せている辞書もあるようで、もはや間違いだとはいえないかも。 慣用読みとは、正しい読み方ではないが、広く一般的になり、認められた読み方。その代表的なものに「消耗」がある。正式な読み方は「しょうこう」だが、「耗」に「毛」があるので、誰かが「しょうもう」と間違えて読んでしまい、それがどんどん広まって、慣用読みになったといわれている。言葉は世につれ。

 今日はしゃべり過ぎて体力が消耗(しょうこう)したと、締めくくったら、皆さんキョトンと・・・。もはや、古き正しき言葉は通じない。 うーん、むべなるかな。

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