181 介護は誰がするべきか?

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~認知症と二人三脚 ~

ガーリック康子

 世間一般の親御さんは、将来、自分に介護が必要になった時、誰に介護をしてほしいと思っているのでしょうか?

 2017年に、内閣府が全国の 55歳以上の男女3,000人を対象に行なった「平成29年高齢者の健康に関する調査」によると、介護を頼みたい人は、男性の場合、「配偶者」が断突で56.9%、「ヘルパーなどの介護サービスをする人」(22.2%)や「子」(12.2%)がそれに続きます。女性の場合、「ヘルパーなどの介護サービスをする人」に頼みたいという人が最も多く、39.5%、「子」(31.7%)や「配偶者」(19.3%)がそれに続きます。「兄弟姉妹」や「子の配偶者」も挙げられており、男性では、それぞれ2.0%と0.5%、女性では、順序が逆転し、子の配偶者(3.0%)、兄弟姉妹(1.5%)となっています。また、この調査結果では、女性では年齢の低い層ほど「配偶者」を希望する人が多く、「子」を希望する人は男女とも年齢の高い層ほど多いことがわかっています。

 日本の介護事情に関する記事やエッセイを読むと、親の介護を誰がするかが題材になっているものが多く見受けられます。しかし、実の親、義理の親にかかわらず、介護の役割を担うのは圧倒的に女性が多く、配偶者の出生順位によって、介護の負担も変わってくるようです。特に配偶者が長男だと、結婚当初から義理の両親と同居している場合もあり、その流れから、義理の両親の介護を任される、または、結婚当初は同居していなくても、介護を機に、義理の両親との同居が始まることも多いようです。ただし、いずれの場合も、介護をするのは「長男の嫁」で、「息子」が率先して介護するという話はあまりききません。

 義理の両親は、縁あって一緒になった夫の親ではあっても、もとは赤の他人です。普段から折り合いが悪くても、「嫁いびり」を受け続けていても、介護は「嫁」の務めとして当然と期待され、行き掛かり上、介護が始まります。「嫁」の負担を軽くするため、公的な介護サービスや、自費でヘルパーなどを利用することもできますが、はなから「嫁」がいるから必要はないと考えている家族もいるようです。家庭を顧みず、仕事一筋で働いてきた「息子」は、自分の親であるにもかかわらず、仕事を理由に「嫁」に介護の責任を負わせます。このような状況で、「嫁」に介護をしないという選択肢はまずありません。

 そもそも、血縁ではない「嫁」には、義理の両親の介護の法的義務はないはずです。民法では、直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があります(民法877条)。特別な事情がある場合は、家庭裁判所の判断により、三親等内の親族間においても、扶養義務が発生することがあります。つまり、義理の両親については、「嫁」が介護する義務はありません。ただし、義理の両親と同居している場合は、直系血族および同居の親族は、互いに助け合わなければならないと定められている(民法730条)ため、扶養の義務が生じます。なし崩し的に同居が始まり、夫の協力がないまま、当たり前のように義理の親の介護の務めを負わされている場合や、断固として介護はしないという主張を変えないために、「嫁」が離婚を考えるのは、それ以外に状況を変える手段がないからです。

 そんな状況の中、自分の親も介護が必要になった時、「娘」として介護をする役割も担うことになります。実家がある場所までの距離に関係なく、「実家通い」が始まります。仕事を持つ「娘」であれば、働く時間と介護に費やす時間の兼ね合いから、働き方を変える必要もでてきます。介護に費やす時間が長くなれば、勤務時間の短縮、転職、場合によっては「介護離職」をせざるをえないこともあるでしょう。もちろん例外はありますが、多くの場合、介護の務めを担い、介護に合わせて働き方を変えて融通をつけるのは、「嫁」や「娘」なのです。夫の親の介護、自分の親の介護、またはその両方を行なっていれば、介護をする側が体調を崩さないほうが不思議なくらいです。

 共働き世帯でも、家事や育児と同じく、介護は「嫁」や「娘」がして当たり前と考える世間の風潮は、今もそれほど変わっていないように感じます。

参考

平成29年 高齢者の健康に関する調査結果(全体版)
https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h29/zentai/index.html

*当コラムの内容は、筆者の体験および調査に基づくものです。専門的なアドバイス、診断、治療に代わるもの、または、そのように扱われるべきものではないことをご了承ください。

ガーリック康子 プロフィール

 本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定。