第64回 広がる多様な生き方

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  日本が過日発表した2021年度の合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に産むと見込まれる子供の数)は1.30で、前年の1.33より更に0.3ポイント低下した。過去には2015年に前年より多少上昇したが、以後は6年連続で低下が続いている。

 しかしこの傾向は日本のみならず韓国も同様で、二月に発表された数字は0.81となっており、また中国でも「子供不要」とする世帯が25%にも達しているという。

 こうした数字の裏に潜むそれぞれの理由について頻繁に耳にするのは、今を生きる若い女性たちが「子を産む」という選択肢以外にも、より自分らしい生活スタイルを選びたいという欲望を持つ人が増えていることが挙げられる。

 この潮流はまだ「大きなうねり」になっているとは言えないまでも、近年はそれが可能である社会的傾向が加速しているのは確だ。

 加えてこの2、3年の新たな理由は、以前にはなかったコロナという世界的な感染病問題や、昨今ではロシア対ウクライナの戦争も暗い影を落としている。戦禍を直接受ける生活ではないにしろ、インフレの加速による物価高、不動産や教育費の高騰などなど・・・共感疲労も広がっている。確かに「子を産んで楽しい家庭を作りたい!」と希望しない若者が増えても無理ないと思える。

養子という選択

 とは言え、若い時は自由にやりたいことや生きたい道を選んでも、ある時子供が欲しいと思った時、残念ながら女性には「出産可能な年齢」と言うものがある。日進月歩の医学の発達で、高年齢出産も珍しくはなくなったが、母子ともに危険が伴う比率が高い。その線引きの一つは更年期を過ぎたかどうかということになるようだが、これは男性にも言えることで、年齢と共に精子の衰えが顕著になる。また男性の場合は、年齢に関係なく「無精子」という人もいて、女性の妊娠が不可能になる場合も珍しいことではない。

 個々にいかなる理由があるにせよ、もし自身以外の子供を育てたいと望む場合は「養子を迎える」という選択肢があるのは嬉しいことだ。

 これは個人的な体験であるが、ビクトリアの2、3世グループの集会に参加すると、主に白人夫婦が東洋人の顔の子供を連れている家族に出会うことがある。生物学的な見地からすると、それは珍しい組み合わせになるのだろうが、聞けば日本から国際養子としての手順を踏んで家族の一員として迎え、実母との連絡もあるのこと。いかに愛おしく大事に育てているかが伺い知れ、傍から見ても微笑ましい光景である。

サンダース宮松敬子提供
サンダース宮松敬子提供

ビクトリア市の例

 世界を見渡せば出生率が低い国は一般的に先進国に多いが、生まれる子供の数が少ないことで将来問題になるのは、言わずと知れた少子高齢化である。

 ではカナダの率はと見れば、2020年の統計では1.4で、成人後も親と同居している率や、第一子の出産年齢も30歳過ぎる傾向が強いという。

 中でもカナダ国内で一番出生率が低いのはビクトリア市で0.95、次いでナナイモ市、バンクーバー市と続く。西海岸の中でも一番気候が温暖なビクトリア市は、東方面の酷寒の町々からリタイア後のシニアが続々と集まることで有名である。統計の数字などを見なくても、昼間町中を歩けばそれは一目瞭然だが、一方IT産業に従事する若者もかなりいてビジネスの発展に寄与していると聞く。この町が「newly wed & nearly dead」と揶揄されるのが頷ける。

サンダース宮松敬子 
フリーランス・ジャーナリスト。カナダに移住して40数年後の2014年春に、エスニック色が濃厚な文化の町トロント市から「文化は自然」のビクトリア市に国内移住。白人色の濃い当地の様相に「ここも同じカナダか!」と驚愕。だがそれこそがカナダの一面と理解し、引き続きニュースを追っている。
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