第69回 依存症の罠

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 BC州のメディアを賑わすニュースで、ダントツに多いと感じるトピックの一つは、違法ドラッグに関するものである。

 幾つものニュースソースによると、今年に入ってからの過剰摂取による死亡者数は一日平均6人。必ずしも常習犯ばかりとは限らず、ちょっとした出来心で手を出した者たちも含まれていると言う。この率から計算すると、今年中には2200人もの死者が出ると予測され、癌による死亡に次ぐ率である。 

 例えば2022年初頭からの詳細では、使用者の73%が主にtrade&transportation(体力を必要とする仕事)に従事する人々で30~59才までの男性と言う。勿論これはBC州ばかりの問題ではなく、カナダ全体に目を向けると、過去6年間で22000人余りが何らかの違法ドラッグで命を落としている。

 驚くべき数字だが、これは多かれ少なかれどの都会もが抱える問題で、根底からの解決策がないまま関連者たちは頭を抱えているのが現状だ。

有名人の違法ドラッグ使用

違法ドラッグの使用済み注射器を入れる箱。公園や公共のトイレなど多くの場所に設置されている。
違法ドラッグの使用済み注射器を入れる箱。公園や公共のトイレなど多くの場所に設置されている。

 カナダでは2018年から違法ではなくなったマリワナの所持や喫煙だが、日本では現在も厳しい取り締まりが行われている。だが有名人が、それ以上の違法ドラッグの所持によって摘発されるのは珍しいことではない。

 ふと頭をよぎる最新のニュースは、女優の三田佳子(81)さんの次男で元俳優の高橋祐也さん(42)が、9月に5度目の逮捕をされた事件である。今回も覚醒剤の所持疑惑だが、初回は14年前の18才の時とか。これでも分かるように、違法ドラッグは一度手を染めると、そこから抜け出すのは並大抵ではないと言われる。

ゆっくり進むアルコール中毒

未成年以外は誰でもが買えるアルコール飲料。
未成年以外は誰でもが買えるアルコール飲料。

 もう一つ依存症として大問題なのがアルコール中毒である。これはドラッグなどの薬物に比べ、重症になるまでにはかなりの時間が掛かるのが普通だが、アルコールは合法で、未成年でない限り誰でもが容易に購買出来るため、中毒になるのもた易い。

 日本のドラマを見て驚かされるのは、外出から戻るとすぐに冷蔵庫から缶ビールを出して飲む場面が多いことである。カナダでももちろんアルコール中毒問題は、違法薬物と並行して大きな社会問題だが、ドラマの中で帰宅早々ビールを飲む姿は筆者が知る限り見たことがない。

 またアルコール飲料のコマーシャルもカナダでは制作者が暗黙の内に自主規制しているためと言われるが、代わりに多いのがチップスや、ハンバーガーなどのジャンクフード。ウンザリしている視聴者も沢山いることだろう。

 コロナのために“お家時間”が増え、スナックや飲酒が以前より多くなったとは最近とみに耳にする。だがひとたび体重が増えると減量には並々ならない努力が必要だし、減酒も断酒も容易ではない。例えアル中のための互助機関(Alcoholics Anonymous)などの力を借りても、一説によると、飲酒欲求を感じなくなる迄には断酒期間に最低3年は要するとのことだ。

 快楽を求めるのは人間の常ではあるが、罠にはまらない自制心のバランスが何よりも重要と言えようか。

サンダース宮松敬子 
カナダに移住してもう何年になるだろう。指一本を10年と数えると、かろうじてまだ片手で済むが、その年月は我が人生の半分以上になる。世間に発表する物書き業を始めて30数年。世の流れに目を凝らすと「That’s not fair!」と義憤を感じる事が多く私を奮い立たせる。そんな自分の感性を頼りに原稿を書き続けている。
URL: keikomiyamatsu.com/
Mail: k-m-s@post.com
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