小説は事実より奇なり?!

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こんにちは!ご無沙汰しております。前回から時間が空いてしまいました(反省!)。

バンクーバー中央図書館への納品や3年ぶりのAnime Revolution 2022に出店者として初参戦するなど、奔走していました。

さて、「実話のようだが作者の意図や気持ちが入り込んでる」フィクションは数多くあります。司馬遼太郎や城山三郎が作り出す主人公のイメージは実物とかなり違うケースも多く、坂本龍馬の実像はそれほどでもないのは知られざる事実です。昔の小説家は陽が当たらない人物を持ち上げることで、へぇというストーリーにするのがテクニックの一つともされます。その中で今回は、「より事実に基づいたフィクション」を紹介したいと思います。

総じて、この手の小説はページ数が多くて分厚く重いので「積読」から抜き出すには勇気が必要です。ただ、読み始めると先を知りたい、ウィキペディアでチェックとどっぷりその世界にはまり込んでしまいます。

伊吹有喜著『彼方の友へ』(実業之日本社)は、実業之日本社創業120周年記念作品です。また、同出版社が発刊していた少女雑誌「少女の友」をモチーフとしています。

まどろむ佐倉波津子は、昔のことを振り返っています。それは、彼女を訪ねてくる人物が70年も前の「乙女の友」の特別付録を持って来たから。戦前、戦中、戦後と「乙女の友」の発刊に関わった波津子の人生を一緒に体験できる物語です。

第158回直木賞にノミネートされていて、現在の視点から主人公が幼少から大人になっていく様を回想する語り方から「朝ドラ」のようだ、という評もあったようです。確かに、朝ドラ的ですがおもしろいから良いと思います!

さて、実際の「少女の友」は1908年創刊、1955年休刊の少女向け雑誌で錚々たる作家が執筆する小説と中原淳一作の挿絵、付録とあいまって大ブームを巻き起こしたそうです。

小説では、挿絵作家は長谷川純司という名で登場します。戦前・戦中期の統制が厳しくなるにつれ、純司の描く乙女な絵は掲載不可となり、雑誌の内容も戦争色に変わっていく様が描かれています。

SNSが当たり前で自由に表現できる今では想像しにくいですが、戦争を知る世代が減少している中で、戦争の惨禍を小説で語り継いでいると思います。

一時帰国中に読んだこともあり、中原淳一さんの作品も気になっていました。本屋巡りもしましたが、ブックカフェも気になっていたので六本木にある「文喫」に行ったところ、なんとエッセイ画集がありました。嬉しい巡り合わせに嬉々とページをめくりました。服のデッサン、心地よい部屋作りのコツを絵付きで紹介していました。

次に紹介するのが、塩田武士著『罪の声』(講談社)です。2020年に映画化されたのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

1984年と1985年に大阪府、兵庫県の食品会社を標的としたグリコ・森永事件をモデルにしたサスペンス小説です。

京都でテーラーを営む俊哉は、父の遺品からカセットテープと黒革のノートを見つけます。ノートには英文に交じって事件と関連のある文字が、テープからは子供の頃の自身の声が流れてくる。一方、昭和最大の未解決事件の真相を追う新聞記者とも交錯しながら過去の真実に迫っていくという内容です。

実際の事件は、未解決で既に時効となっています。ネタバレになるのでオブラートに包んで表現しますと、解が知りたいがために目がさえて夜更かししても後悔しません!

読み終わった後は、親に当時がどんな感じだったのと思わず聞いていました。

ではまた次回、お会いしましょう。