「着物とマナー」

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カナダde着物 

第3話 季節*初秋「白露」

 “マナーとは、他人に好かれたりいい感じに見せる為のツールではなく、お相手への思いやりの心です。”

 当地で有名な新渡戸稲造氏が「武士道」の中で言葉を残していました。
 (コナ流に言い換えております。)

 本文では「体裁で行なうのなら礼儀はあさましい行為である」とも言ってます。現代にも通じる教えではないでしょうか。

 マナーはお付合いの上で切っても切り離せないものですが、着物を身に付けてますと特に人の目に付くこともあり、その素行を見られてしまう場面が多いようです。

 着物が着崩れない動きや歩き方は、着物を身に付けるようになると自然にできる様になりますが、マナーは時代や場所によって違うこともありますので、いつも気にかけて自分なりのものさしを決め、心の通うお付合いをしていきたいものです。

「着物警察」
 今回テーマは“着物警察”です。

 浴衣論争に続き、こちらもSNS上では物議を醸しているようです。

 “着物警察”を検索していただければ様々な女性達の声が見られるでしょう。簡単に説明しますと、街に着物や浴衣で繰り出した人達(この場合、若い女性のケースが多いです)が、見ず知らずの女性達に呼び止められ、着付や着物と帯の取合せ諸々、批判的な言葉や注意を浴びるという、とてもよくできた俗語です。

「伝統文化って何?」
 この問題は伝統文化の歴史と深い関わりがあるので、作家の藤井青銅氏のコラムとご意見を参考にさせて頂きました。

「日本の伝統って何?」と聞かれて、皆さんはどう説明しますか?様々な歴史背景の中受け継がれてきたもので、宗教、商業や政治経済にも影響を受けとても幅広く、ひとくくりにできにくいと言われております。

 青銅氏が日本の伝統を“ザ・幻想”と本の中で述べていたのは、その浮雲のような世界の中で変化し続ける人々の想いを表現されたのかなと思います。

「まぼろし~!」(IKKOさん登場)私達が幻想の中に生きているのなら、もう一度、伝統とは何かを世代を超えて共有し考え、現代に起こる様々な人間関係のトラブルを避けていきたいものです。

「お互いにマナーを守りながら、学び合う」
 話は着物警察へ戻りますが、昔は正論だった知識や常識を、見ず知らずの着物を装う方々に一方的に指摘し、不快な思いをさせてしまうのでしたら、それはマナー違反になってしまう気がします。

<僭越ながらコナ流のご提案>
 お声を掛ける前に、6秒間考えてみるのはいかがでしょうか?(*1)

 目の前にいる方は、どういう目的で着物を着ているのでしょうか。礼装でしょうか、モダンなファッションでしょうか、もしくはコスプレということもあります。

 言いたくなったら少しの間、考えてみます。見ず知らずの方に声を掛ける時、普通はそのようにされますね。

 ただ私もそうなのですが、同胞に対して人は親切心や親心のような感情があふれ、余計な事を言ってしまう可能性があります。確かに着物の知識があれば、着物への関心が向きますから、声を掛けたくなるは自然なことです。

 素敵だな~と見られて嫌な方は少ないでしょう。もしお相手から意見を求められた時は分かる範囲で答えますが、地方や職業別の着付、そして流派もありますので個人的な意見は最小限に抑えます。

 基本的に礼装や準礼装以外でしたら、個人の好みとして装ってよいかと思います。見知らぬ方には軽く声を掛けるぐらいが丁度いいのかも知れません。ただ、いきなり着物や帯を触るのは控えたいものです。

(そうそう、コナから声を掛けられて“着物警察”と感じられたら、ごめんなさい。先に謝っておきますね。笑)

 逆に、言われた方も6秒間は様子を伺ってみてはいかがでしょう。もしかしたら適切なアドバイスだということもありますし、着物を通して親しくなる可能性もあります。心無く不適切だと感じたら、直ぐにその場から立ち去りましょう。

 お互いに謙虚な気持ちと態度で、人への思いやりを忘れずにいたいものです。

 皆さま、着物警察を恐れないで、着物でお出掛けしましょう!

昨年、京都で見かけた着物の二人。Photo © the Vancouver Shinpo
昨年、京都で見かけた着物の二人。Photo © the Vancouver Shinpo

「若い世代から学ぶ」
 コナ世代以上が考えたいのが、若い世代からも日本の伝統は学べるということです。新しい伝統が次々に生まれてます。京都の千家十職(*3)でも世代交代が進んでいますし、若手着物デザイナーがインターネットで今までにない着物、帯や和装小物を提案しております。

 私も購入しました“半襟Tシャツ”や“うそつき半襦袢”(*4)などは、当初は批判もありましたが、いろいろと改善もされているようで、カジュアルな着物の下に着るのにお手入れが楽で、暑い夏の日本では肌襦袢(下着)の代わりにもなります。

「伝統リテラシーを意識しましょう」
 最後に、青銅氏がこれから古くからの伝統を受継ぎ、新しい伝統に出会う日本人が“大切にしたいこと”を提案されてましたので、これから活動する上で気に留めておきたいと思います。

 伝統リテラシー(*4)は、簡単に言うと伝統を評価していく力、です。

 日本にとどまらず世界中に和風やジャパニーズスタイルといった商品がはびこっていると思います。北米で流行ってますZENスタイルもそうでしょう。フェイクと言っていいぐらいの日本人から見て眉をひそめるものが流行ると複雑な気持ちになりますね。

 反対に日本から離れて良さを見直されるものもあります。

 世界に出て行った日本の文化を日本人がちゃんと評価できるのかどうか、これから大事になるのではないでしょうか。

 茶道の世界では「基本が出来ていないと応用が出来ない。」とよく言われます。歌舞伎では漫画のストーリーとコラボレーションしても基本の歌舞伎を守っていると聞きました。

 どんなに伝統が変化しても“品格”そして「武士道」の中にある礼儀、つまり“人への思いやりは”守り続けていただきたいと願います。

 「伝統リテラシー」を意識していくことが、海外に住む私達の役割でしょうか。 

(*1)「6秒考える」 アンガーマネージメントで使われる6秒間の我慢です。
(*2)「千家十職」 茶道に関わり、三千家に出入りする塗り師、指物師などの十の職家をあらわす尊称です。
(*3)「半襟Tシャツ」 普通のTシャツですが襟だけ着物用の半襟になってます。もう少し原型に近い「うそつき半襦袢」の他にも「うそつき長襦袢」「大うそつき襦袢」もあるそうで、どこまでうそつくの!ってぐらいです。
  長襦袢の見える所だけ本物と同じ素材で、見えない所は着心地の良い、汗を吸収しやすい木綿などを使います。インターネットで検索して見て下さいね。
(*4)リテラシー 世の中に出回る沢山の情報を取得選択していく時に、裏表や真偽を見抜き、客観的に評価する力、知識や能力をリテラシーと呼びます。

参考資料*藤井青銅氏 「日本の伝統」の正体

「紬の女王*大島紬」

 前回のコラムでを“織着物のシンデレラ”と紹介しましたが、覚えていらっしゃいますか?

 その紬の中で女王と呼ばれているのは大島紬です。

 その中でも九州の鹿児島県を発祥の地としました大島紬は、手染で泥染めが有名です。工程の手間と織の精密さで「世界三大織物」とも呼ばれてます。希少価値が高いのでしょうね。

 絹100%の紬ですが、準礼装の二十歳の振袖として鹿児島のお嬢さんたちは着飾るそうです。地元愛を感じますね。

コナの大島風紬

 本物の大島紬ではなくても、いろいろな紬がありますから愉しまれて下さい。色が濃いと汚れが目立たず、普段着にぴったりです。そろそろ秋の気配なので渋い色同士で揃えました。

大島紬ではないけれど雰囲気が似ている紬です。9月上旬は白系の帯と合わせました。絹紬*露草 ナイロン製半幅帯*流水 Photo © コナともこさん
大島紬ではないけれど雰囲気が似ている紬です。9月上旬は白系の帯と合わせました。絹紬*露草 ナイロン製半幅帯*流水 Photo © コナともこさん
9月中旬はブラウン系の名古屋帯と合わせました。絹紬*露草 混麻名古屋帯*吟風 Photo © コナともこさん
9月中旬はブラウン系の名古屋帯と合わせました。絹紬*露草 混麻名古屋帯*吟風 Photo © コナともこさん

「お寺で七五三のお祝いしませんか?」

 瞬く間に過ぎていった今年の夏ですが、暦の上では既に秋となりました。

 和の学校@東漸寺では、今年も七五三のお祝いを計画しております。

 ただ、昨年までのような合同のご祈祷などは出来ませんので、完全予約制の個別式で着物レンタル、着付、記念写真撮影などを承ります。

 詳しくはコナまでお問い合わせ下さいませ。

日時:随時受付けております。
会場:東漸寺館内 
209 Jackson St, Coquitlam 
お問い合わせ コナともこ tands410@gmail.com
和の学校ホームページ https://wanogakkou.jimdofree.com/

カナダで楽しむ着物の世界のkona tomoko コナともこさん

コナともこ
 アラフィフの自称着物愛好家。日本文化の伝道師に憧れ日々お稽古に励んでおります。
 10年前からコキットラム市の東漸寺で「和の学校」を主宰。日本文化を親子で学び継承する活動をしております。
 カナダ人の夫+高校生と大学生3人娘+老犬1匹と暮らしております。バンクーバー近郊在住。 

和の学校ホームページ https://wanogakkou.jimdofree.com/
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