第3回 楠瀬智子先生「歯磨きしても虫歯になるのはなぜ?~虫歯予防の為の知識」後編

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皆さん、こんにちは。前回は虫歯ができるしくみと、口腔内細菌叢(フローラ)、宿主(歯)という2面から虫歯予防についてのお話をしましたが、今回は、唾液と食事に焦点をあててみたいと思います。

前回のコラムはこちらです。第2回 楠瀬智子先生「歯磨きしても虫歯になるのはなぜ?~虫歯予防の為の知識」前編

3.まず、唾液について考えます。

唾液は虫歯の原因となる菌が出す酸を中性化するのにとても重要な役目を果たします。唾液の緩衝能にもっとも重要な物質は重炭酸塩です。唾液中の重炭酸イオン濃度が増えると唾液のpH値も上昇しますが、その重炭酸イオン濃度は唾液分泌量に強く依存するので、唾液分泌量が多いと唾液の緩衝能が高くなり、少ないと緩衝能が低くなります。唾液の分泌量が少ないと再石灰化がおきにくく、虫歯になるリスクが高まります。

シェーグレン症候群(唾液を作っている唾液腺や涙を作る涙腺などに炎症を起こす全身性の自己免疫疾患)や頭頸部癌に対する放射線治療の副作用であるドライマウスはよく知られていますが、その他にも、高血圧の薬、鎮痛剤、抗不安薬、アレルギーを抑えるための抗ヒスタミン薬など、多くの薬の副作用として唾液分泌の低下があります。ストレス、口呼吸、アルコールの摂取や喫煙などによっても唾液の分泌が抑制されることがあると言われています。

ドライマウスを改善するために、食事の後に無糖ガムやキャンディーを噛んで唾液の生成を促したり、こまめに水を飲んだり、アルコールを含まない保湿力の高い洗口液、保湿ジェルを使用したりします。口腔乾燥症の薬が投与されることもあります。

4.最後に食事について考えます。

食事の頻度を見直すことは虫歯予防のために重要です。食事をして、歯の表面が一時的に酸性になっても、唾液の作用などによって、しばらくすると中性化されます。だだ、中性化されるまでに約1時間程度かかるので、食事の頻度が高いと歯の表面が酸性のままになっている時間が長くなり、虫歯に進行していきます。1日に何度も間食をするよりも、3回の食事だけにして、水分は水やお茶など虫歯の原因にならないものにすれば、虫歯になりにくいです。3食の食事とは別に間食としておやつやジュースを飲むよりも、おやつや糖分のある飲み物などは食事と一緒にとるようにするほうが、虫歯になるリスクが下がります。

では、どういった食品が虫歯を作りやすいのでしょう。あまり甘くないクラッカーなどは虫歯になりにくいと思われている方が多いのですが、クラッカーのような歯にくっつきやすく、でんぷん質の炭水化物は虫歯をおこしやすいと言われています。もちろん、砂糖摂取量が多いと虫歯になりやすいのですが、食品中の「糖」というのは、甘い食べ物だけではなく、ごはんやパンのようなでんぷんが含まれる糖質も、虫歯の原因になります。食物繊維の豊富な野菜と果物、チーズ、牛乳、プレーンヨーグルトなどの乳製品、ナッツ類は虫歯になりにくく、間食におすすめです。逆に虫歯になりやすいのは粘着性のあるグミやお菓子です。お菓子を食べるなら、できるだけ歯にくっつきにくく、口の中に残りにくい、粘着性の少ないものが虫歯になりにくいと考えられています。

虫歯予防は、子供からお年寄りまで、歯がある限り大事です。歯が形成される子供の時期にはフッ素をとりこんで歯質を強くして虫歯になりにくくすることが大切ですし、その後も食習慣や口腔ケアに気を付けていかなければいけません。口が乾燥するとか、唾液が減ったりしていないか、自分で気にすることも大事です。歯茎が退縮して歯の根っこが露出すると、エナメル質という硬い層ではなくて、柔らかい象牙質やセメント質が露出してしまうことになり、虫歯になりやすくなるので、フッ素の濃度が高い歯磨き粉をつかうなど、積極的な虫歯予防が必要になることがあります。ここでは一般的なお話しかしていませんが、虫歯のなりやすさには個人差があり、それぞれの方のリスクに合わせた虫歯予防が必要です。

プロフィール

歯科医師 楠瀬智子
2004年北海道大学歯学部卒業
日本の歯科医師免許、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州の歯科医師免許、BC州の歯科衛生士の免許を保有
2016年よりキツラノのDr. Wayne Okamura Inc.にて勤務(火曜、木曜、金曜)

Dr. Wayne Okamura Inc.
TEL:604‐736‐7374
住所:2732 W Broadway #202, Vancouver, BC, V6K 2G4
診療日:火曜から隔週土曜 7:30 am – 6:00 pm(曜日により診療時間は異なります)
診療内容:定期健診、クリーニング、虫歯の治療、根管治療、抜歯、マウスピース矯正などの歯列矯正治療、インプラント手術、ホワイトニングなど