気がつかないうちに進行する歯周病:後編

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治療とメインテナンスについて

皆さん、こんにちは。前回は歯周病がおきる機序や歯周病と全身疾患とのかかわりについてお話しましたが、今回は歯周病の予防、治療とメインテナンスについてお話します。

歯周病を予防するためには、1 日 2 回は歯を磨き、少なくとも 1 日 1 回は時間をかけて正しい方法でブラッシングすると同時に、歯と歯の間の汚れをとるためのフロスや歯間ブラシを使うことが必要です。どんなに上手にブラッシングをしていても完全に歯垢をとることは不可能です。その為、レントゲンやポケット診査など歯周病の検査や全身疾患などの問診の結果から導かれた、その時の歯周病のリスクに合わせて、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、もしくは6ヶ月ごとに定期的な歯科医院でのクリーニングが必要になります。これは小さい子供のうちから開始して、歯(インプラントも含む)がある限り、生涯を通じて実践することが必要です。

次に歯周病の治療について説明します。

歯周病にかかった場合は、様々な検査をして、治療計画をたてます。急速に歯周組織が破壊されているような状態のときは、できるだけ早く細菌の活動を抑えるために抗生物質を投与したりしますが、慢性の歯周病の場合はまず歯石とりをします。一般的に”クリーニング”と言われているものですが、スケーリング・ルートプレーニングといって、歯肉の上と下の歯石をとって、バイオフィルムを破壊していきます。歯石とりの時に歯茎が痛いことがあるのは、炎症を起こしている歯茎の中の歯石や歯垢をとっているためです。歯石取りは歯科衛生士が行うことが多いですが、多くの北米の歯科衛生士は麻酔の注射をうつための資格を持っているので、痛みが強い場合は麻酔をして、歯石取りをしていきます。

歯肉縁上歯石という、歯肉より上の歯の表面についている歯石は、割と柔らかく、簡単に取れます。この歯石は下の前歯の裏側(ベロ側)、上の奥歯の頬っぺた側など、唾液線という唾液が出る場所の近くに多くつきます。ざらざらとした、白色から黄色っぽい、歯磨きで取れない硬いものが歯の表面についていることを見ることがあるかと思いますが、それが歯肉縁上歯石です。

歯周病治療を行う上で非常に重要な歯石が、黒い歯石(歯肉縁下歯石)です。歯肉縁下歯石は歯垢(プラーク)と、血液などの成分が結合するため黒くなります。歯肉の中にあり、歯の根に付着しているので、簡単に目で見ることはできません。見えていないために、手指の感覚で取っていくので、歯石とりに時間がかかります。さらに、歯肉縁下の歯石は歯肉縁上の歯石に比べて非常に強固にこびりついています。歯根の表面はもともとデコボコしていて、くぼみにある歯石を取り残してしまったりすることも多く、見えない歯肉縁下の歯石の除去は簡単ではありません。超音波スケーラーや手用スケーラーなどをうまく使って、時間をかけてとっていくことが必要になります。歯周病菌の繁殖の足がかりとなる歯肉縁下の歯石がとれていないと、歯周病が進行します。縁下歯石がたくさんついている場合は、1時間のクリーニングで全体をきれいにすることができないので、何回かにわけて歯石取りをしていきます。

歯石取りと同時に行われるのが、ご自分でのプラークコントロールの指導です。患者さんごとにどこに磨きの残しが多いのかを確認して、歯ブラシの持ち方、当て方、動かし方、力の入れ方などを指導します。フロスや歯間ブラシなどの使い方も説明します。状態によって、電動歯ブラシ、ウォーターピック、マウスリンスを勧めることもあります。また歯の汚れを染め出して、磨き残しをチェックすることもあります。歯石をしっかり取り、正しくプラークコントロールすることにより、歯ぐきの炎症は減少します。

かぶせ物や詰め物などの状態を確認するのも大切です。歯茎に近いところや歯茎の中で適合の悪い修復物がある時は歯垢がつきやすい環境になってしまうので、除去して、適合の良いものに変えます。また、歯周病が進行して予後不良な歯は、いつまでも置いておくと隣の歯まで影響を受けるので、歯を抜くことが必要な場合もあります。異常なかみ合わせで歯が動揺しているような時は、かみ合わせを調整することもあります。また、歯と歯が重なっていたり、歯が内側に傾いたりしていて歯並びが悪い部分はプラークがたまりやすく、歯肉の炎症が起きやすくなります。そのため、矯正治療で歯並びを改善することは、歯周病の予防につながります。コントロール不良の糖尿病は歯周病を悪化させますし、高血圧の治療薬などの副作用で歯ぐきが腫れることもあるので、医科と連携して治療を行うこともあります。喫煙者の歯周病治療は非常に困難なので、禁煙指導も行われます。喫煙者が歯周病治療の際に禁煙した場合では、喫煙し続けた場合よりも、歯周病の進行が遅く、歯の喪失が少なかったと報告されています。歯周病予防、また歯周病治療成功のためには、禁煙することが望ましいです。

このような基本治療を行っても深い歯周ポケットが残っている場合は、外科治療(歯茎の手術)を行うことがあります。深い歯周ポケットの中を盲目的に歯石取りをするのは限界があるので、歯茎を剥離して歯石取りをしっかりと行うことによって深いポケット減らすことができ、清掃しやすい環境になります。また、ケースによっては歯周組織再生療法によってある程度、歯槽骨を増やすことができます。ただ、部分的に治りきらないところが残ることもあります。そのような場合でも、3ヶ月ごとのメインテナンスを続けることにより、歯周病の進行を食い止めることができるとされています。

歯周病は再発の多い病気といわれています。治療により症状が改善したとしても、溶けてしまった骨が完全に元通りに戻るわけではなく、ブラッシング不足や、歯科医院でのクリーニングを怠ると細菌が活動しはじめ歯周ポケットが深くなります。歯周病は容易に再発する病気なので定期的な管理が重要です。歯周病治療で大切なのは、予防、診断、治療、そしてメインンテナンスです。

気がつかないうちに進行する歯周病:前編~歯周病の原因とほかの病気とのかかわり

プロフィール

歯科医師 楠瀬智子
2004年北海道大学歯学部卒業
日本の歯科医師免許、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州の歯科医師免許、BC州の歯科衛生士の免許を保有
2016年よりキツラノのDr. Wayne Okamura Inc.にて勤務(火曜、木曜、金曜と、月1回土曜日)

Dr. Wayne Okamura Inc.
TEL:604‐736‐7374
住所:2732 W Broadway #202, Vancouver, BC, V6K 2G4
診療日:火曜から隔週土曜 7:30 am – 6:00 pm(曜日により診療時間は異なります)
診療内容:定期健診、クリーニング、虫歯の治療、根管治療、抜歯、マウスピース矯正などの歯列矯正治療、インプラント手術、ホワイトニングなど