日系ホーム入居者をコロナ禍でサポート

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日系ホーム Photo ©バンクーバー新報
日系ホーム Photo ©バンクーバー新報

~日系シニアズ新事務局長ジェイ・ハラガさんに聞く~

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州の公衆衛生命令が2月5日まで延長されることが決まった。高齢者施設は引き続き、訪問者を厳しく制限される。11月に日系シニアズヘルスケア&住宅協会(NSHCHS)新事務局長に就任したジェイ・ハラガさんに、ロバート新見日系ホーム(日系ホーム)の現状などについて聞いた。

家族の訪問は1人だけ

 新型コロナウイルスで高齢者施設が大きな打撃を受けました。特に日系コミュニティでは日系ホームの入居者の方がどうしているのか心配していると思います。現状について教えてください。

 公衆衛生命令が2月5日まで延長されて、日系ホームの入居者の皆さんの状況は厳しいと言えるでしょう。日系ホームではコロナ前のようにビジターを許可することができません。キーワードはエッセンシャルビジターで、医師や医療サービスの提供者、そして入居者の世話をするために家族を1人選んで、訪問していただいています。

 家族1人というのは、たとえば今週は娘、来週は息子というように、交代で1人だけが訪れることができるのでしょうか。

 いいえ、入居者1人あたり、家族を1人決めて、その人のみです。入居者の娘さんが世話をすることになったら、ずっとその娘さんのみが訪れることができます。

 そのほか難しいことはたくさんあります。高齢の入居者にマスクを着用してもらうのは、不快に感じる方もいらっしゃって簡単ではありません。入居者やスタッフの精神上の健康の維持も大きな課題となっていて、努力しています。

 入居者のアクティビティについては身体を動かすもの、頭を使うもの、アートなど、入居者に希望するものを選んでもらって、1対1で行っています。

 1対1だとコロナ前と比べると、1人当たりが行うアクティビティの時間は減っているのでしょうか。

 そうですね。以前のようにたとえば入居者10人に集まってもらって、スタッフがアクティビティを行うということができず、1対1です。また、以前は多くのボランティアの皆さんの協力もありましたが、今はボランティアに来ていただくこともできません。

 入居者の方にとってアクティビティの時間が減っていますし、スタッフの負担は増えています。感染防止のためなので仕方がありません。

Zoomビジットなどで心のケア

 入居者の皆さんも1人の家族ではなく、たくさんの人と会いたいでしょうね。

 ですから日系ホームではZoom ビジットを行っています。大きなスクリーンとスピーカーのある部屋を用意して、入居者にZoomを通して家族や大切な人と会っていただいています。画面が大きいので臨場感があります。リアルで会っていただけないのですが、できるだけリアルに近い雰囲気を出せるように努めています。

 もう一つはバルコニービジットです。ドア越しになりますがバルコニーでご家族と顔を見て話をしていただいています。バルコニービジットは1人ではなく複数の方でもOKです。

 制限がある中ではありますが、なんとか家族や大切な人たちの顔を見て、話をしていただくことで、入居者の方たちの精神状態が大きく改善しました。

 パンデミックが始まったときから、緊張状態で仕事をしているスタッフの精神状態も心配です。できるだけコミュニケーションをオープン、かつ密にするようにして、「この人はちょっと心配だな」と思うときには、休んだほうがいいよ、休みなさいと声をかけるような体制を作るようにしています。

昨年1月に既に開始したコロナへの対応

 多くの高齢者施設で新型コロナ感染者が発生していますが、日系ホームはどうなのでしょう。

 今のところクラスターは発生していません。初動が早かったこと、そして、スタッフ全員がシニアの命を預かっているとの自覚をもって働き、生活をしていることがあると思っています。

 日系ホームではコロナが大きな問題になり始める前から対応を開始していました。
 
 去年の1月に武漢で原因不明の肺炎が流行っている、この流行がカナダにもくる可能性がある、早めに対応してPPE(個人用防護具)を確保しておくことを、スタッフのひとりが当時の事務局長のキャシー(マキハラさん)に提言しました。おかげで品切れになる前にPPEを確保することができました。

 コロナでビジターが制限されています。施設でのクラスターはスタッフから入ってくるので、公衆衛生命令の「コアバブル」を守ることや体調管理が極めて重要です。

最初の自動ドアを入ったところで、訪問者の氏名、要件、健康状態確認、体温測定などを行う。問題ないときのみ、中に入ることができる。Photo ©The Vancouver Shinpo
最初の自動ドアを入ったところで、訪問者の氏名、要件、健康状態確認、体温測定などを行う。問題がないときのみ、中に入ることができる。Photo ©The Vancouver Shinpo

 日系ホームでは毎日のミーティングで、コロナ感染阻止のためのプロトコルや、どういう症状がある場合は仕事には来てはいけないかなど、リマインドしています。常に確認をすることが大切だと思っています。今も、ドアノブなど多くの人が触れる「ハイタッチエリア」は1日に2回、消毒しています。

 日系ホームを訪れる人には、名前、連絡先を聞き、健康状態をチェック、到着時と退出時の体温測定、マスクも到着時にこちらの用意した新しいものに変えていただいています。

 私たちは入居しているシニアの生命と安全を預かっているという自覚を持って、働くようにしています。

 現在、日系ホームで最も難しいことは何でしょう。
 
 公衆衛生命令が2月5日まで延長になりました。制限のある状態での生活や勤務がさらに1カ月続くことになるので、メンタルヘルスの確保ですね。

 入居者のご家族との間でのコミュニケ―ション確保にも努めていて、2カ月に1回のペースで、バーチャルタウンホールということで、自由に話をしていただく機会を作っています。次回は1月12日18時からの予定です。

 18時というのは家族の方が参加しやすい時間を選んだということでしょうか。

 はい、希望の時間をうかがって、仕事の後、帰宅して落ち着いた時間ということで18時に設定しました。できるだけ多くの方に参加していただけるよう努めています。

 ジェイさんは新たに事務局長に就任されたということで、目標を教えてください。

 短期の目標は、新型コロナウイルスの感染クラスターが発生しないよう引き続き日々努力を続けること、精神および身体の健康を確保することです。

 11月から勤務を開始したのですが、できるだけスムーズな移行となるよう、コミュニケーションに重点を置いてきました。スタッフ、入居者、ご家族としっかりコミュニケーションを取るようにしています。

 長期的には、イキイキプログラムを安全に再開して、アウトリーチプログラムをさらに充実させていくことです。今回のパンデミックにより、私たちは多くのことを学びました。

 Zoomなど新しいテクノロジーも用いていきたいです。

 また、隣組やトロントのJCCC(Japanese Canadian Cultural Centre、日系文化会館)とも協力して、新しいプログラムを開発していきたいと思っています。去年、隣組の事務局長に就任した船橋敬子さんはNSHCHSの理事でしたのでよく知っていますし、既に情報交換をしています。

 最後に日系コミュニティにリクエストがあれば。

 今はボランティアの方に来ていただくことはできないので、入居者を元気づけるためのLetters for Seniorsで手紙を送っていただけると皆さんに喜んでもらえるので、送ってくださればと思います。

 文章の手紙だけでなく、絵や俳句、詩なども好評です。

英語、日本語、絵手紙など、バラエティ豊か。Photo © Nikkei Seniors Health Care and Housing Society
英語、日本語、カード、絵手紙など、バラエティ豊か。Photo © Nikkei Seniors Health Care and Housing Society



ジェイハラガさん(Jay Haraga)
 バンクーバー生まれ、スティーブストン育ちの日系三世。

 日系シニアズヘルスケア&住宅協会(NSHCHS)の前はSuperstoreにも寿司を卸しているBento Sushiで西部カナダ部門の運営を担当。スタッフの採用、チーム作り、財務管理、契約交渉などマネージメント業務を行う。

 Bento Sushiが収益の一部を社会に還元しようと寄付を行ったのが縁で4年前からNSHCHS 理事。

 「収容所に送られた母は辛かった過去について口をつぐんでいたので、直接聞くことはなかったのですが、三世として知りたいと思い、日系カナダ人に起こったことは自分で調べました。また日系センター・博物館のイベントなどにも参加してきました。

 父は亡くなりましたが、母は介護施設に入っています。認知症のために日系ホームに入居することはできないのですが、高齢の家族が施設に入居している人の立場になって考えるよう努めています」

(取材 西川桂子)

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