野菜の素材を楽しむ日本の「Value」を伝えたい

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Brave Child Farmの須田勇子さん

 日系文化センタ―・博物館(以下、日系センター)で6月からファーマーズマーケットの開催が予定されている。そのファーマーズマーケットに参加するBrave Child Farmの須田勇子さんに話を聞いた。

 アルバータ生まれの勇子さんは、両親が移民の日系2世。兼業農家で、平日は土木工学の仕事に就くエンジニアだ。春のこの時期、勇子さんが農場に来るのは週末で、平日は一緒に仕事をしているビジネスパートナーが農作業に就いている。パートナーはアジア人ではないが、アジアの野菜に興味を持っているという。

 冬の間はエンジニアとしての仕事に集中して農作業は休む。一方、農場での仕事量が最も増える7~8月にかけては農業に専念する。

 勇子さんが農業を始めたきっかけはいくつかある。農業に興味があったこともあるが「うつ病になり、したいことをしようと思ったこともあります」と振り返る。

 地球温暖化問題も農業をしようと考えた理由の一つという。「子どもを産んだことで次の世代に、子どもたちに、良い世界を残してあげたいと考えるようになりました。私が一人で農業をしても、大して世界は変わりません。それでも、やれるだけのことをしたいと思いました」と力を込めた。

日本の人たちが食べ慣れた日本の野菜を届けたい

「お店で買ったサツマイモを種芋にしました」と笑顔の勇子さん。©The Vancouver Shinpo
「お店で買ったサツマイモを種芋にしました」と笑顔の勇子さん。©The Vancouver Shinpo

  日本の野菜を作りたかったことも、農業を始めたきっかけの一つという。

 「私が子どものころは、食べ慣れた日本の野菜などの食材が手に入らず大変だったと思います。自分が母親になって、改めて母の苦労が分かるようになりました」としみじみ思いやる。

 また「弟の奥さんが日本の方で、使ったことのある野菜、馴染みのある野菜はありがたいと、私たちが作った日本の野菜を喜んで食べてくれます」とうれしそうな表情を見せた。日本のナスやカボチャ、サツマイモ、らっきょうやシシトウなども作っている。

 野菜づくりで、勇子さんが目指していることがもう一つある。それは、日本の「Value=価値」を伝えていくことだという。

 「日本料理では複雑な味にするより、素材そのものを楽しみますよね。また、油っぽいものとシソを一緒に食べることで、油っぽさを緩和させるとか、歯ざわりを楽しみます。日本の野菜を届けることで、カナダでは一般的ではない、こういった感覚を伝えていきたいと思っています」

 日本の野菜を作るための種はアメリカの会社を利用している。またサツマイモについては日系の食料品店から購入したものを種芋にしている。唐辛子も、日本のタカノツメや韓国の唐辛子というように、日本のみでなく、アジアの野菜も育てている。

 「何がうまく育つか試行錯誤しながら、パートナーと話し合って作物を決めています」という勇子さんは「カナダでの日本の野菜作りで難しいのは気候の違いですね」と眉をくもらせた

 「ニガウリなどは暑い土地の野菜なので難しいです。サツマイモもプラスチックをかぶせるなどして、温度を上げる工夫をします」とさまざまな努力や工夫をしている。また、無農薬で育てているため、雑草との戦いでもあるという。

ずらっと並ぶ苗。今は苗づくりの時期という。©The Vancouver Shinpo
ずらっと並ぶ苗。今は苗づくりの時期という。©The Vancouver Shinpo

地域支援型農業で作物を食卓へ

 Brave Child Farmの野菜は日系センターのファーマーズマーケット以外では、どこで購入できるのだろう。「主にCSAを通じて届けています」との答えが返ってきた。

 CSAは「Community Supported Agriculture」の略称で、日本では「地域支援型農業」と呼ばれている。1980年代にアメリカで始まった農業の仕組みで、消費者が農家に代金を前払いして、定期的に作物を受け取る契約を結ぶ。

 Brave Child Farmでは今年3月に60シェア分の募集を行った。既に売り切れたというが、シェアを購入すると、16週間、毎週7~9種類の新鮮な季節の野菜セットを受け取ることができる。

 「収穫がよいとたくさんお届けすることができますし、逆に届く作物の量が減る可能性もあります。シェアを買ってくださった人は、私たちの農業を支援して、リスクとプロフィットを共有していただくという形態です」

 以前はチャイナタウンの中での受け取りだったが、新型コロナウイルスの昨年からブリタニアコミュニティセンターに移転した。「チャイナタウンだと車を停めるのが難しいので、ブリタニアになって便利になったという声も聞きます」

Brave Child Farm
https://bravechildfarm.ca/

インスタグラム
https://www.instagram.com/bravechildfarm/

Brave Child Farmは日系センタ―で開催される、日系ファーマーズマーケットで野菜を販売する予定。

日系ファーマーズマーケット
6月から10月の第2&第4日曜日
10:00 am ~ 2:00 pm
日系文化センター・博物館

 6月から10月まで第2・4日曜日の午前10時から午後2時まで日系ガーデンにて開催。

 12~16軒の日系ベンダーが集まり、日本の食べ物や野菜、クラフトなどを販売する。詳細は随時ウェブサイトに更新される。
 centre.nikkeiplace.org/events/nikkei-farmers-market/

(取材 西川桂子)

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