「生徒への愛情と教育への情熱をもって、楽しく学習」グラッドストーン日本語学園 村上陽子園長インタビュー

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 「『グラッドストーン』の名前の由来は、寺小屋式に我が家で始めたのがグラッドストーン通りだったから」と以前の寄稿記事で紹介したグラッドストーン日本語学園村上陽子園長。

 1971年にスタートし、公民館や公立学校、教会など会場を転々と7回移動して、8回目で現在の日系文化センター・博物館(当時はナショナル日系博物館・日系ヘリテージセンター)内に落ち着いた。

 2021年には新型コロナウイルス禍で創立50周年を迎えたが、授業はオンラインを取り入れて続け、B.C.州かるたも制作。卒業式もできる形で実施した。当初から変わらない「生徒への愛情と教育への情熱をもって」楽しく学習をモットーに、次の50年への扉を開く。

「あわてず、芽をつまず・・・」

卒業生が作ったB.C.州かるたを手に。グラッドストーン日本語学校 村上陽子園長。Photo by The Vancouver Shinpo
卒業生が作ったB.C.州かるたを手に。グラッドストーン日本語学校 村上陽子園長。Photo by The Vancouver Shinpo

 5月29日に卒業したなかで、12年以上グラッドストーン日本語学園に在籍した生徒の「卒業生の言葉」(同園ひかり文集より)を拾ってみると・・・『漢字検定や日本語能力試験N3の勉強はとても辛かった。夜遅くキッチンテーブルで泣きながら勉強した。母がいつも助けてくれて、卒業にたどり着くことができほんとうによかった』『宿題だけではなく本読みや課題発表、作文を書くことが難しくて辛い思いをした。みんなの一生懸命な様子を見てやる気が出た』『幼少のころからカナダに住んでいるのになんで日本語を勉強するのかわからなかった。高学年になるにつれ徐々に分かった。日本にいる家族と何不自由なく日本語で話せることや手紙も書けることで、日本の友達もできた。あきらめずに続けてよかった』『毎週行われる言葉ノートのテストと英語の勉強を両立させるのはほんとうにたいへんだった。お母さん、もう夜遅くまで手伝わなくてもいいよ。心から感謝します』など、こんなに素敵な言葉をもらえる保護者や先生たちはほんとうに幸せだ。

 ここまで育てることができた真髄は何か、村上陽子園長に聞いた。

ほかの習い事との両立の難しさ・・・でも、そこからです ・・・

 「保護者の気づき、そして当園の先生が子どもの気持ちをくみ取り、保護者・教師・生徒の三者が一体となって日本語学習に励んでいるのです。背中を押し、肩をなで、『大丈夫よ、あなたならきっと乗り越えられる』とみんなで一生懸命、真剣に取り組むのです。結果を急がずじっくりと。私たちは決してあきらめません。また、ときには、すでに卒業した先輩の手助けを借りることもあります。先輩の体験談、自分が乗り越えた今、何をしているかを話してもらうのです。これは刺激になります。自分も先輩のようになりたいと思い、日本語学習を続けています」

当園の先生は、11人中7人が、勤続12年以上のベテラン

 「先生たちは、子どもたちに教えること、育てることがほんとうに好きなんですね。私もそうなんですが、子どもたちが育っていくのを見るのはワクワクします。こんな自分の好きな仕事を50年間以上も続けてこられて、私は幸せです。先生たちも同じ気持ちです。そうした熱い気持ちで生徒を包んであげれば、きっとはい上がってくれます。子どもたちを信じています。私たちの生きがいでもあります。もう一つ、当園が生徒たちの応援のために活用しているのが、日本語能力試験と漢字検定です。いずれも等級がありますが、生徒それぞれの現状の力に合わせ上級を目指すよう指導しています。決して競争をさせるのではなく、マイペースで、目指せる努力目標を明確にするためです」

日本語能力試験に挑戦で日本語力アップ

 日本語能力試験は、外国人が日本語能力のレベルをはかる目安のようなもの。レベルは、N1、N2、N3、N4、N5の5段階があり、入門者の一番やさしいレベルがN5、難しいのがN1で新聞を読め、聞く力も日本人と普通に理解できるレベル。この日本語能力試験に、中学科ではN3に合格し、高等科ではN1のレベルに到達することを目標にしている。

漢検はカナダ唯一の準会場認定校

 漢字能力検定試験(漢検)は、海外準会場において、1年生の漢字10級から常用漢字すべてを対象にした2級までのレベルがある。漢検5級(小学6年の漢字)に合格する力があれば、読解の問題がすらすら読めるため日本語能力試験N1に合格する生徒が多い。それを目標に学習している。

 グラッドストーン日本語学園は、カナダ唯一の準会場に認定されてから20年目を迎えた。この間には、カナダ以外からも受験者がいた。受験結果は、一人ひとり詳しく各設問の評価が書かれていて、個人成績、全世界受験者の成績の平均点がグラフで示され、次の学習につながるようになっている。

日本文化を知る授業も充実

 節分の豆まき、正月、餅つきなど日本の行事を大切にし、茶をたてて茶道の一期一会の精神を学び、日本文化に触れる授業も充実させている。また、同園のある日系文化センター・博物館に隣接する日系ホームで暮らすおじいさん、おばあさんとの交流も大切にしている。

卒業生が作ったBC州かるた

創立50周年記念に学園の生徒たちが制作したB.C.州かるた。Photo by The Vancouver Shinpo
創立50周年記念に学園の生徒たちが制作したB.C.州かるた。Photo by The Vancouver Shinpo

 創立50周年記念に制作したB.C.州かるたが完成。これは、中学科、高等科の生徒たちがブリティッシュ・コロンビア(BC)州の歴史や観光名所を調べ、何度も検討を重ね、七五調の美しさを取り入れた読み札を作った傑作。絵札も生徒たちが描いた。卒業記念品として贈るとともに、授業のなかでも使い、ファンドレイジングとして販売も行っている。

家庭の日本語環境に合わせたクラス編成

 学園では、「生徒への愛情と教育への情熱をもって」楽しく学習し、3歳児科から高等科まで一貫した授業をしている。

 9月からの3・4歳児クラスの園児を募集し、小学科・中学科・高等科への編入生も受け付けている。

グラッドストーン日本語学園

住所:#270-6688 Southoaks Cres. Burnaby, B.C. 日系センター内2階
連絡先:604-515-0980
Eメール:info@gladstonejls.com

(取材 笹川守)

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