バンクーバーから車で片道2800キロ、神秘の大地、ユーコンへ 3

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 ブリティッシュ・コロンビア州の北、アラスカの東にあるユーコン準州。北極圏に暮らす先住民のグウィッチン族の言葉で「偉大な川」を表す「ユーコン」が語源となったという。手つかずの大自然が残っている。

 仕事でバンクーバーに2018年に赴任してからユーコンに魅せられて、2020、2021年と2度訪れた種村幸治さんに2020年の旅(9月5日から14日まで)について話を聞いた。種村さんの旅のリポートの最終回。

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 天気にも恵まれ、大満足の遊覧飛行だった。しかし、終了が午後6時で、この日はワトソンレイク泊。ヘインズジャンクションから590キロ移動しなければならない。カーナビで到着予想時刻を見ると深夜2:45とのこと。

 「まいったな、時間変更をOKしなければよかった」と後悔しながら急いだ。たが、思わぬ収穫があった。オーロラとの遭遇だ。

 ワトソンレイクまであと100キロ~150キロくらいのところを走行中、ボヤっと明るい。「もしや?」と車を停めると、光の帯が踊っている。肉眼でも写真並みに美しいオーロラが見えた。

ユーコンの大地で見たオーロラ。写真提供 種村幸治さん
ユーコンの大地で見たオーロラ。写真提供 種村幸治さん

 おなじみのカーテン状のゆらゆらとしたものから、線状のもの、ものすごい速さで棒のような光が「ひゅんひゅん」と続けて走っているものまで。さまざまなオーロラが次々に現れ、感動の連続だった。

 幻想的な光のショーは月が顔を出すことでとうとう終了。ワトソンレイクまで急いだ。

 8日目はアラスカハイウェイとはお別れして、37号線をスチュワートまで。途中にある、Tā Ch’ilā (ボヤレイク)州立公園で止まったりと、休憩しながら南下する。

 夕方になると、路肩の草を食べに来たブラックベアに多数遭遇する。5分走れば数頭という調子だった。最初は珍しいので写真を撮っていたが、「これでもか!」という調子でキリがない。途中で撮るのをやめた。

 メジアディン・ジャンクションからスチュワートまでのBCハイウェイ37A号線は氷河ハイウェイとも呼ばれ、名前のとおりいくつもの氷河が点在する。

 2年前にユーコンを訪れたときにも立ち寄ったベア氷河を今回も訪れる。氷河の末端が道路から見ることができ、圧倒的な迫力なのだが、あとで2年前の写真と比較してビックリ。気候変動で随分後退してしまった。氷河がどんどん見られなくなっていきそうだ。

2年前に訪れた時から随分後退してしまったベア氷河。写真提供 種村幸治さん
2年前に訪れた時から随分後退してしまったベア氷河。写真提供 種村幸治さん

 その日、泊まったスチュワートはアメリカ国境に近い村。アメリカ側のフィッシュクリーク野生生物観察エリア(Fish Creek Wildlife Observation)ではクマがサケを獲るのを安全に見ることができるのだが、新型コロナ感染拡大で国境を越えることができなかった。

 9日目にメジアディン・ジャンクションを過ぎて37号線を南下し始めてすぐのこと。道路をグリズリーが歩いていたので、速度を落としてそろそろ近づいてみたが、草むらに移動してしまった。せっかくのグリズリーベアとの遭遇だったのにとがっかりしたが、見ると車が数台止まっている。さらに大きなカメラを持った人たちが数人いる。

 すぐ下の小川には紅く色づいたサケが見える。もしかしてほかのグリズリーが来るかもしれないと待つことにした。

 しばらくすると上流側から巨大なクマが来た! 予想が的中した。遡上するサケを次々に捕らえて食べている。海からはるばる故郷の川に上って来たサケだが、冬眠前のグリズリーにとって大切な栄養源だ。意外だったのは、少し食べたら、次のサケを捕まえる、の繰り返し。

迫力のグリズリーベア。写真提供 種村幸治さん
迫力のグリズリーベア。写真提供 種村幸治さん

 周囲には食べかけのサケが散らばっている。「ちゃんと食べろよ」と思ったが、あとで草むらに移動して残りを食べていた。圧倒的な自然の営みを見ることができた。

 2018年にスチュワートまで旅をしたときに立ち寄った、温泉Aiyansh Hot Springs(注、温泉を紹介するウェブサイトではAiyansh Hot Springsとなっているが、地図ではNass Valley Hot Springsとなっていた)が泉質、景色も素晴らしかったため、今回も訪れる予定にしていた。温泉に向かっている途中、検問があって、目的と行先を聞かれる。

 「州立公園を見に」というと「閉まっている」「車から降りずにそのまま通り過ぎてくれ」。仕方がない。先住民の居住区でもあるため、すべて閉鎖していたのだ。温泉は断念してテラスを経由して16号線に入り、プリンスジョージへ。

 最終日となる10日目は、最後にムースが見られればと100マイルハウスの西、30キロほどのところにあるムースバレー州立公園に寄ってみることにした。狭い上に舗装されておらず、ひどいデコボコ道と悪路だったが、とりあえず行ってみる。残念ながらムースを見ることはできなかった。

 バンクーバーに到着して、総走行距離を見ると6,839.9キロだった。行きは一人で運転したが、帰りは途中で合流した同僚が運転をしてくれたので助かった。

(取材 西川桂子、写真提供 種村幸治さん)

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