2021年企友会・懇話会共催新春懇談会 ~業界の声を聞くパネルディスカッション2~

1082
企友会・懇話会共催新春懇談会
企友会・懇話会共催新春懇談会

 企友会とバンクーバービジネス懇話会が1月27日、Zoomによる2021年新春懇談会を共催で行った。パネルディスカッションの懇談会では、6つの業界から参加した6人のパネリストから、コロナ禍をどのようにして乗り越えてきたか、苦労したか、そしてポストコロナの計画や戦略について生の声を聞いた。

 前編では日系企業がコロナ禍をどうやって乗り越えてきたかについてリポートした。後編は新型コロナウイルスワクチンの接種が始まり、出口が見えてきたと考えられている中、ポストコロナの戦略についての話をまとめた。

パネリスト
不動産―フレッド吉村さん(リマックス不動産)

小売―猪田雅公さん(Suzuya Japanese Market)

旅行―山田圭哉さん(HIS Canada Inc.)

飲食―増田新梧さん(Kamei Royale Japanese Restaurant Group)

貿易商社―吉浦隆行さん(Itochu Canada Ltd. )

留学―田中覚弘さん(Jpcanada留学センター

モデレーター―企友会理事、岡本裕明さん(企友会理事)
(順不同) 

***

オンライン学習が増えて、様変わりしている留学

岡本さん「ポストコロナが来るときの準備をそろそろ始めるべきかと思っています。Jpcanadaの田中さん、大学などではオンライン化が進んでいて、主要大学は今年いっぱいオンラインで授業を進めることが決まっています。

 先ほど語学学校もオンラインという話がありました。ニューノーマルで教室での授業はなくなるのでしょうか」

田中さん「なくなることはないと思います。実際、生徒から対面にしてほしいという要望が多いので、今はソフトロックダウンですが、バンクーバーの学校の多くはオンラインと対面の両方を取り入れています。

 おそらく政府からの指導によるためと思いますが、以前だと1クラス14~15人の対面クラスが今は8人程度となっています」

岡本さん「私は留学する人は海外の人と机を並べて勉強して、会話をして…という体験も大切だと思っています。オンラインの英語学習だとそういうことができません」

田中さん「日本人は“本気”で語学を習得したくて来る人は少ないように感じています。そもそも留学するためには仕事をやめなければらないし、コストパフォーマンスがよくありません。皆さん、外国人の友達を作りたいとか、海外で勉強するという夢をかなえたい、長期の旅行感覚などでカナダに来ています。

 そういうものがオンラインで置き換えられるか?というと、私は難しいと思います。

 現在のような状態が続くと語学学校はこれまでと同じようにしていては生き残れません。規模を縮小する、考え方を変えるなどが必要となってきます。それこそ3Dゴーグルを使っての授業というように違う形での提案が必要かと思っています」

デリバリーでレストラン業界はどう変わる?

岡本さん「続いて増田さんにお伺いします。レストラン業界でこの1年で大きく変わったのは、テイクアウトとデリバリーに関してだと思っています。ただデリバリー費用は高いです。増田さんはどうお考えでしょう?」

増田さん「はい、非常に高いです。デリバリーの会社は約20%以上の費用をレストランに請求していました。BC(ブリティッシュ・コロンビア)州政府では最近、上限を設けるようデリバリー会社に指導を行いました。

 デリバリーを通すと、商品の価格もどうしても高くなりますが、うちのエビス・オン・ブロードウエイのようにデリバリー費用をお客様にチャージせずに、無料で提供している店舗もあります。亀井ロイヤルではできるだけお客様の負担にならないようにするシステムを検討しています」

岡本さん「コロナで内食(うちしょく)が増えました。収束したら飲食業界はどういう形で残っていくとお考えですか? レストランは2極化が進み、高級店か安い店のみ残るのではないかという話もあります」

増田さん「レストランを利用することは、美味しい料理とサービスを楽しむものです。私は高級化、もしくは価格勝負にでるかどうかは、重要性はないと考えています。コロナが落ち着いた後は、以前のようにレストランに来て楽しんでいただけるのではないかと思っています。

 レストランは衛生管理などさまざまな規則を守ってお食事やサービスを提供しています。一方、デリバリーの場合は、衛生管理が明確になっていない部分もあります

改革に動く旅行業界

岡本さん「山田さんに旅行業界についての質問です。コロナが収束したときに、お客様が急激に増えるということはあるでしょうか。そのような事態となった場合の旅行インフラのバックアップ、受け入れ態勢はどうでしょう」

山田さん「私もこれは難しい問題だと思っています。コロナが長引き現地のガイド会社が閉業しているケースも出てきています。ビジネスライセンスをキャンセルしたり、ドライバーのレイオフを行っているバス会社もあります。

 長期化したコロナが収束したとき、ガイドの皆さんが帰ってくるのかについても、難しい部分はあると思っています。ただ、カナダもBC州も観光産業に力を入れています。一気に戻ってくることはなく、徐々に戻ってくる場合、受け入れられないという状況はおそらくないのではないかと考えています。

岡本さん「HISの澤田(秀雄)会長は売上に対する旅行の割合を現状の9割から2割にまで下げるとおっしゃっていました。社内でニュービジネスのアイデアを募っていて、10種類ぐらいの新しい事業を取りまとめ中で、そのうちの一つとして、たとえば横浜中華街のバーチャル観光サービスを始めたとありました。

 一方でJTBの山北(栄二郎)社長は交流創造事業に進めていこうと表明しています。今後、旅行業はどこに向かっていくのでしょう」

山田さん「HISは創業40年を迎えて、上場以来初めて前期赤字を計上と大ピンチに立たされていて、おっしゃるように多角化事業に目を向けています。でも旅行事業は絶対にやめません。ただし、かわりに会社を支えるためにエネルギー、農業、日本では蕎麦屋などを始めています。

 アウトバウンドに関してはオンライントラベル(*オンライン・トラベル・エージェント、略称OTA。実店舗を持たずにインターネット上だけで旅行商品の取引を行う旅行会社)が一時期に伸びたことがありました。コロナのようなことがあると、キャンセルしたいのに電話がつながらないなどのトラブルがあり、安く買ったはずなのに結局高くついた問題も出てきています。

 結局、安心・安全の大手旅行会社にお客様は戻ると思っています。

 一方でインバウンドに関しては、HISでは5月から週5~6本のペースでオンライン・バーチャルツアーを積極的に発信しています。来たくても来られないポテンシャルトラベラーを引き留めていくための取り組みです。バーチャルに関しては今後発展の余地はあるかもしれないと思っています。

 旅行の形態は、”行って、観光して、帰る”という形態から、”人と人”、”コミュニティとコミュニティ”をつなぐような手配が数年前から増えてきています。旅行会社の枠の中だけでなく、総合商社的な役割も今後は必要になっていくのではないかと思っています」

続く住宅不足

岡本さん「吉村さんに質問です。住宅業界については、コロナというよりカナダ政府について伺います。カナダ政府は異様ともいえる勢いで移民を受け入れようとしています。2021年に関しては40万人、人口の1%を超える移民を受け入れると言います。しかも毎年同じような規模で移民を受け入れていこうとしています。

 当然、住宅需要が発生します。さらに中国政府が香港の居住者に対して、二重国籍を認めないと言っていて、香港に住んでいる約30万人がカナダとの二重国籍を持っているそうです。

 国籍を選ぶ際にカナダに戻ってくる人も多いとすると、その結果、住宅需要がさらにひっ迫するのではないでしょうか」

吉村さん「中国人のお客様は世界中に親戚がいて、親戚同士のつながりも強いです。そのためこちらの不動産をどうしようという考え方はありません。

 ただ人口に対する住宅の割合は間違いなく不足しています。2ミリオン(200万)を超えるような物件の成約率は今、かなり下がっています。動く価格帯と動かない価格帯があります。COOPのような一般市場より安くで賃貸をする物件…というように3極化していくのではないかと思っています」

カーブサイドピックアップなどで変わる小売業界

岡本さん「小売業界の猪田さんへの質問です。最近、大手のスーパーなどでカーブサイドピックアップを積極的に取り入れています。ラジオCMでもよく聞くので、新たなマーケティングなのかと思っています。

 Suzuyaは日系スーパーとしてどのような特色を出して生き残り策をお考えでしょうか」

猪田さん「デリバリーやオンラインオーダーが増えていくと思いますが、弊社ではまだシステムができてないので早急に追いつくように対策を考えているところです。

 難しいのは普通のオンラインショッピングのように郵便で送ることができない冷凍食品の扱いです。また主婦の方が一つ一つ入念にチェックして購入される野菜についてもどうするかです。問題ないものから始めることになると思います。

 ほかには、材料のみ購入したい主婦の方以外に、調理もほとんど終わっていて、あとは混ぜるだけといった商品、レストランなどで作ったものの販売です。

 オンラインショッピングは資金投入も必要で大手のほうが有利です。たとえばアマゾンが日本食を販売したら、多くの店があっという間につぶれてしまいます。

 実は野菜を作る農園事業を考えています」

木材業界担当が旅行業界にも目を配る商社

岡本さん「最後に吉浦さん。商社はなかなか一般の人にはなじみのない業種です。グローバル化により、ヒト、金、モノ、情報が飛躍的に動くようになりました。これから商社の役割はどういう形になり、何に取り組んでいくのでしょう」

吉浦さん「私はインターネットがでてきた98年入社です。情報が命の商社ですが、情報は誰にでも平等に手に入るようになると消滅するのではと言われていましたが、消滅せずに今まで来ています。

 それは最後の情報、また最初の情報は平等には手に入らないためです。それにつきると思います。細かい情報を得ることに関しても同様です。

 私は木材業界ですが、旅行業界にも目を光らせておかなければならないと思っています。木材が売れる理由として、新築以外にもフローリングを変えるなど家の増改築もあります。

 今は家にいる時間が多いということもありますが、日本人と比べてアメリカ人やカナダ人は旅行にものすごくお金を使います。そのお金が流れています。日本円で言えば旅行に使っていたお金が40~50万円で、家の改築にも40~50万円かかります。

 ただし、増改築は毎年するようなものではありません。コロナが収束したら、皆さん旅行に行くと思われます。業界的にはコロナが終わると、木材はしばらく売れないと思っています。

 山田さんがHISは旅行の比率を下げるとおっしゃっていましたが、私は下げない方がいいと思います」

岡本さん「パネリストの皆さん、貴重なお話をありがとうございました」

(取材 西川桂子)

合わせて読みたい関連記事