「BC州の薬局サービスとファーマケア」~S.U.C.C.E.S.S.

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左:コロナ禍以前の薬局相談窓口。右:コロナ禍でアクリルパーテーションが立てられ、「BE KIND」の貼り紙も。Photo courtesy of Atsushi Sato
左:コロナ禍以前の薬局相談窓口。右:コロナ禍でアクリルパーテーションが立てられ、「BE KIND」の貼り紙も。Photo courtesy of Atsushi Sato

 S.U.C.C.E.S.S.リッチモンド移民定住支援プログラムが、3月2日午後1時から2時半まで、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州の薬局と医療保険についての無料ZOOMワークショップを開催した。

 講師は、バンクーバー新報コラム「お薬の時間ですよ」の執筆でおなじみ、日本とカナダで薬剤師の資格を持つ佐藤厚さん。新型コロナウイルス禍が薬局にもたらした影響などもまじえた話に、参加16人が聴き入った。その概要を紹介する。

BC州の医療保険

 講師の佐藤さんは、まず、カナダの医療にユニバーサルヘルスケア(包括的公衆医療制度)を取り入れたトミー・ダグラスを紹介。カナダの医療制度の特徴は、皆保険制度と州単位での運営であることをこのセミナーの開始にあたり明確にした。日本も皆保険制度であり、高齢者医療や高度先端医療の発達など、両国の共通点にも触れた。

 次にBC州で利用できる医療保険としては、州民であれば加入の義務があるメディカルサービスプラン(MSP)、ファーマケア、民間医療保険の3種があると説明。MSPは医科診療費、ファーマケアは薬代、民間医療保険は歯科、医療器具、マッサージ、理学療法、メガネ、旅行保険などの費用を負担する。

 MSPに関し近年の大きな変化は、2020年より保険料支払いがなくなったこと。診療、検査等の全額を負担し、患者の窓口負担はない。

薬局や薬剤師が提供するサービス

1.薬局が提供するサービス:

  • 処方せん薬
  • 一般用医薬品(OTC:Over-The-Counter)
  • 医療器具の販売、患者相談、各種予防接種など。

2.患者が処方せん薬を手にするまでの経過:

1. 受診(コロナ禍ではオンライン・電話での診察も)
2. 医師による処方せん発行
3. 処方せんを薬局に持っていくかファックスで送信
4. 薬剤師による調剤
5. 薬剤師から薬についての説明
6. 代金の支払い、薬の受け取り

 コロナ禍では、感染予防の観点から、医師が患者に紙の処方せんを手渡す代わりに、ほとんどの場合で薬局へファックス送信されるようになった。ファックス処方せんの数が激増したため、今でも多くの薬局で処方せんの入力が追い付いていない現状があることを、佐藤さんは説明した。

 1枚の処方せんで繰り返し同じ投薬を受けることが可能なリフィル制度は、日本ではできないが、カナダでは可能。電話やオンラインでも受け付ける。(日本では2022年4月からリフィル制度を導入)

3.薬剤師の仕事:

  • 個人情報の確認–正しい人に正しい薬を提供するため
  • 処方された薬の説明–正しい服用方法を伝えるため
  • 副作用と対処方法の説明
  • 薬の相互作用の説明–(例)ワルファリンと納豆
  • 処方量と処方期間の確認–処方せんの有効期間を確認するため(通常1年)
  • 自己負担額と公的・民間保険による負担額の確認

 一方、薬剤師業務は変化し続けている。薬剤師の名前で薬を出す「エマージェンシーサプライ」は、コロナ禍では医療機関での受診が容易でないことが影響して急増した。処方せんの延長や変更、剤形変更、同種同効薬への変更、薬剤リコールなど、条件付きのこともあるが、薬剤師の仕事に含まれるようになってきた。

 インフルエンザ、肺炎球菌、帯状疱疹、破傷風などの予防接種はこれまでも薬剤師が行っていたが、コロナ禍ではワクチン接種が加わった。

 処方せん薬の金額は、薬代と調剤料の合計となる。調剤料(例えば10ドル)には、患者指導に対する報酬なども含まれ、薬局が個別に設定できる。

 「薬代はMSPでカバーされない」。佐藤さんは強調した。

BC州の薬剤費保険ファーマケア

 薬剤費や医療用具費の負担保険はファーマケアだ。次のような部門に分かれている。

 フェア・ファーマケア、プランB(介護施設居住者が対象)、プランC(収入補助受給者が対象)、プランG(精神科領域の薬剤費が対象で、医師の申請が必要)、プランP(緩和医療プログラムのもとにある患者が対象)、プランW(先住民の資格保持者が対象)。

 ファーマケアの特徴には次のようなことが挙げられる。

  • フェア・ファーマケア–MSPとは別に、自ら登録手続が必要。登録していなければ全額を支払い続けることになる。登録や登録確認は、電話や書面のほか、ウェブサイトを通しても可能。
  • 免責金額(Deductible、患者自身の自己負担額)–2年前の収入を基に決定される。毎年Income Tax Returnの申請がされていない場合、免責金額が決定されないので注意。
  • 免責割合–免責金額までは100%自己負担。それ以降はファーマケアが70%負担、患者負担は30%となる。世帯年間最大額があり、その額を超えれば全額ファーマケアの負担。累積期間は毎年1月1日から12月31日まで。
  • 負担対象薬–「ベネフィット」(保険適応薬)のみ。効果が同じであれば、値段の安い薬を使う。ブランド薬(先発医薬品)よりジェネリック薬(ブランド薬と同じ成分の後発製品で、ブランド薬より安価)を使う。
  • スペシャルオーソリティー–条件付きでベネフィットではない薬でもベネフィットとみなし、免責金額以降が負担される。医師からファーマケアに申請。
  • プランB、C、G、P、W–ファーマケアが指定する薬や医療用具の費用を全額負担。

民間医療保険

 ファーマケアで負担されない部分の薬剤費は、雇用主や個人で加入を行う民間の医療保険(Extended Care Plan)により負担が可能。ただし、ファーマケアに登録していることが前提。

 薬局での支払いがなくなるわけではなく、また、免責金額、負担範囲・割合、請求方法などは保険会社やプランによりさまざまである。それぞれのサービスについてよく知っておくことが大切で、公的保険と組み合わせ、最良の方法を考えてほしいと言い、佐藤さんはセミナーを結んだ。

 最後の質問コーナーでは、MSPカードや番号についての質問も寄せられた。電話での問い合わせのほか、州のウェブサイトでも確認可能であること、また、民間医療保険の加入時にはMSP登録がされている必要があると念を押していた。

ファーマケアのウェブサイト:
https://www2.gov.bc.ca/gov/content/family-social-supports/seniors/health-safety/health-care-programs-and-services/pharmacare

MSPのウェブサイト:
https://www2.gov.bc.ca/gov/content/health/health-drug-coverage/msp/bc-residents

(取材 高橋 文)

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