ワークショップ「遺言・相続の備え-BC州における法的書類・パーソナルプランニング」開催

468

 移民定住支援団体S.U.C.C.E.S.Sによるオンラインワークショップ「遺言・相続の備え-BC州における法的書類・パーソナルプランニング」が、6月3日に開催された。ノータリーパブリックの眞鍋恭子さんが、遺言書や委任状などの作成の大切さや、いつどのように作成するかなどについて説明した。

ノータリーパブリックとは

 ノータリーパブリック(Notary Public、以下ノータリー)は、日本の公証士、司法書士、行政書士を組み合わせたような業務をおこなう。ノータリーは契約書、不動産、遺言書に関する分野で法的アドバイスを顧客に提供することができる。

 だがブリティッシュ・コロンビア(BC)州公認の資格なので、カナダ国外およびカナダの他州に関する法的なアドバイスをおこなうことはできない。

 眞鍋さんはノースバンクーバーでSenju Notary(www.senjunotary.ca)という事務所を開いており、遺言書、委任状といった法的書類の作成、不動産の登記、一般的な公証業務、契約書の作成をおこなっている。

生前に準備しておきたい書類

 病気や大けがをして体が不自由になったり、認知症などで判断能力が衰えてしまったりした場合に、代理人や後見人にさまざまな件を実行してもらうための書類には、以下のようなものがある。

1.Representation agreement(代理人契約書)

a)Section 7(第7項)

 銀行口座の開設、医療処置の方法や決定、弁護士を雇ったり裁判を申し立てたりするなど、一般的に必要なことを代理で実行してもらう。不動産の売買や名義変更、賃貸契約などはできない。

b)Section 9(第9項)

 第7項より重要な決定権や実行力を持つ代理人を指定するもの。代理人契約書は第7項、第9項であれ、法務や財務に関する決定や執行はできない。委任状や第7項と合わせて作成することも多い。

2.Power of attorney(委任状)

 この書類で指定するAttorney(後見人)は、不動産の売買、モーゲージの契約などにも代理で署名することができる。長期の旅行をするなど一定期間のあいだに、預貯金や投資の管理のために、期限をきめて後見人を指定することもできる。ただし、この書類は判断能力がなくなった場合には無効となる。

 一方、Enduring power of attorney(永続的委任状)は、判断能力がなくなった場合でも永続的に有効というもの。委任状では財務と法務に関して委任することになるので、信頼できる人を任命することが大切。家族や友人に限らず、銀行、ファイナンシャルプランナー、ノータリー、弁護士などを任命する人もいる(通常、有料のサービスとなる)。

3.Advance directive(事前ヘルスケア指示書)

 病気やけがを負ったときなどに、医師や看護師などの医療従事者に対して、どのような治療や投薬などを望むかといったことを指示する書類。代理人を指定するものではない。この書類は判断能力を失った場合に有効となる。

終活の一環として準備しておきたい書類

Will(遺言書)

 亡くなったあとの各種手続き、葬儀や埋葬の方法、遺産相続についてなどの希望を記載した書類。未成年の子どもがいる場合、後見人の任命もできる。認知症や、病気などで意識がないなど、判断能力がなくなってしまった場合、遺言書は作成することができない。

 遺言書がない場合、遺産は法定相続に則って分配される。また遺言書がないことによって、葬儀の準備や、遺産、家財道具などの後始末について、残された人に負担をかけてしまうこともある。遺産を誰にどのくらい残すかなど希望がある場合は、遺言書を作成しておくと安心。

公正書類にする必要性は?

 遺言書、委任状、代理人契約書は、オンラインなどで手に入るフォームを使って自分で作成することも可能だが、内容が正しいか、意思が正しく反映されているか、証人による署名が正しい方法に則っているかといったことを確認するのは難しいという面もある。

 加えて、ノータリーが作成したものではなく自分で作成した遺言書などの書類を持ち込んでも、ノータリーがそれに署名をするということはできないという点にも留意したい。

質疑応答

たくさんの質問が寄せられたが、ここで一部を紹介する。

-後見人はひとりだけ任命できるのか。

 複数人でもよい。遺言執行人や代理人も同様。執行人に順位をつけたり、子ども全員で執行してほしいなどと指定できる。複数人を任命しておくほうが安心であるが、委任状など、全員の署名が必要になる書類もあり、全員が署名をするまでに時間を要する場合もある。

-遺言書の内容変更はどんなときに必要?

 遺言執行人が亡くなったり、判断能力がなくなってしまったりした場合、財産の大きな動きがあった、子どもが生まれた、結婚や離婚をしたなどといった場合には変更が必要である。

-書類はどう保存すればよい?

 原本は顧客に渡されるので、銀行の金庫、または自分で耐久性の高い金庫を用意して保管する。紛失してしまい判断能力がなくなってしまった場合、再度作成ができなくなるので、水気や火気を避けて大切に保管したい。家族に預けるということも可能。

 遺言書、委任状、代理人契約書といった書類は、自身に判断能力がないとみなされると作成することができない。元気なうちに少しずつでも先に進めてプランニングをしていくことが大切だ。

(取材 大島多紀子)

合わせて読みたい関連記事