「ウィスラーで子どもたちにモーグルをコーチする貴重な経験」モーグル女子元日本代表 星野純子さんインタビュー(前編)

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元モーグル日本代表、星野純子さん。2022年7月12日、バンクーバー市内レストランForage前で。
元モーグル日本代表、星野純子さん。2022年7月12日、バンクーバー市内レストランForage前で。

 今年2月中国・北京で開催された冬季オリンピックに出場し、3月に現役を引退した星野純子さん(リステルホテル所属)。大好きだったモーグルという競技を離れ、今は次のステップへの充電期間として色々なことに挑戦する準備中だ。

 6月下旬にはウィスラーで子どもたちにモーグルをコーチする機会を得て、新しい可能性にも気づいた。7月12日、帰国前に立ち寄ったバンクーバーで話を聞いた。

 前編はウィスラーでのコーチ経験について。

ウィスラーで子どもたちにモーグルをコーチ

 6月25日から7月3日までブリティッシュ・コロンビア(BC)州ウィスラーで開催されたMomentum Campsにコーチとして招待され、来加した。ウィスラーを訪れるのは2回目。夏は初めて。「すっごいいところでした」と笑う。

 招待されたきっかけは、現役時代の友人でモーグル元選手からの推薦だった。「私はそんなにすごく英語が堪能じゃないんですけど」と笑って、「でも彼女が私っていう選手を、なんかすごく好きでいてくれて、『ジュンコっていう存在を子どもたちとかにも知ってほしい』って言ってくれて」。

 この友人もこのキャンプでコーチをした経験があり、星野さんもキャンプ自体は「すごい有名」と知っていたと言う。モーグル男子元カナダ代表ジョン・スマートさんがディレクターを務めるスキーとスノーボードを指導するプログラムで、ウィスラーで毎年開催されている。

 今年は6月10日から7月18日まで5週間開催され、星野さんは第3週でコーチとして参加した。この週の参加者は10歳から17歳までで約100人。各グループに分かれ、コーチが付く。

 星野さんらが担当したグループは約7人で、午前中は雪が残るウィスラーの頂上付近で一緒に滑って、ビデオ撮影したり、ワンポイントの課題をクリアできるよう練習したりとモーグルが上達するコツをアドバイスする。午後1時半で雪上でのレッスンを終え、下山。午後からは麓で「アクティビティの時間で。モーグルのジャンプを練習するための施設ウォータージャンプがあるので、ジャンプのエア台があって着地が水という、そういう練習もやってました」。参加者にとってはまさにモーグル漬けの6日間。

 「メニューは決まっていなくて、コーチ次第ですね」。レベルもさまざまで、オリンピックを目指すアスリート系から楽しく滑ることを目的としているグループまで。それでも練習環境は抜群という。

夏にウィスラーで開催されているモーグル教室の環境に驚き

 キャンプに参加した感想を聞くと「楽しかったです!」と弾むような声で返ってきた。「すごい良い経験でした」と満面の笑みを見せた。

 引退時にはメディアに「子どもたちにモーグルの魅力を伝えたい」と語っていた。それは「日本の子どもたちに向けて考えていたんです」と言う。

 日本の子どもにモーグルを伝えていかないとモーグルという競技が衰退していくという危機感もある。オリンピックが終わったあとで「イベントとかあると子どもたちが興味を持ってくれるので、きっかけになったらなという思いで言ったんです。最初は世界の子どもたちにもっていうのは全然考えてなくて」。

 しかし「たまたま今回こういう機会があったので来てみて。すごく楽しっかったです」と目を輝かせた。

 楽しかった理由のひとつは子どもたちの反応。1日の終わりに「今日はこれで終わりです。ありがとうって言ったら、『ジュンコ、ほんとうにありがとう。すばらしいコーチだった』『すごく良い練習ができました。ありがとう』って声をかけてくれて。私の名前って覚えにくいと思うんですけど、ちゃんと覚えてくれてて、毎日会うと『ジュンコ〜』って話しかけてくれたりとか、押しの強い子は『今日も一緒に滑りたい』みたいな感じで来てくれて」。積極的な北米の子どもたちに「すごくびっくりした」と笑いながらも感動した様子。

 ただ、北米の選手層の厚さの理由には、こういう自己主張や自分がやりたいという気持ちが強いこともあるのかもと日本との違いも痛感したと話した。

 日本との違いと言えば、今回のスキーレッスンの環境もそうだ。「すごい良い環境だなって思いましたね」。この時期に雪の上でスキーをして、下山するとウォータージャンプ台がある。トップアスリート並みだ。「こんな小さい頃からスキー選手として最高の環境で練習できるのはすごいなぁって思いました」

 最高の環境が子どものモチベーションも、テンションも、上げるのかもしれない。「スキーへの向き合い方の違いも感じた1週間でした」と語った。

後編に続く。

星野純子(ほしの・じゅんこ)
モーグル女子元日本代表。チームリステル所属。ロシア・ソチ、中国・北京冬季オリンピック出場。北京では13位。2022年3月21日の全日本選手権(2位)を最後に現役を引退した。
現在は、地元新潟や母校、福島などでの頻繁に講演を行うほか、地元新潟や富山のチーム、また北海道でもジュニアの指導にあたっている。

7月上旬でも雪が残るウィスラーで、コーチ仲間と。Photo courtesy of Junko Hoshino
7月上旬でも雪が残るウィスラーで、コーチ仲間と。Photo courtesy of Junko Hoshino

(取材 三島直美)

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