「モーグル以上に夢中になれるなにかを探して」 モーグル女子元日本代表 星野純子さんインタビュー(後編)

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元モーグル日本代表、星野純子さん。2022年7月12日、バンクーバー市内レストランForage前で。
元モーグル日本代表、星野純子さん。2022年7月12日、バンクーバー市内レストランForage前で。

 今年2月中国・北京で開催された冬季オリンピックに出場し、3月に現役を引退した星野純子さん(リステルホテル所属)。大好きだったモーグルという競技を離れ、今は次のステップへの充電期間として色々なことに挑戦する準備中だ。

 6月下旬にはウィスラーで子どもたちにモーグルをコーチする機会を得て、新しい可能性にも気づいた。7月12日、帰国前に立ち寄ったバンクーバーで話を聞いた。

 前編はウィスラーでのコーチ経験について話が弾んだ。後編は中国・北京五輪とモーグルへの思いについて。

新型コロナとも戦った北京オリンピック

 新型コロナウイルス感染拡大がまだまだ収まらない中での北京オリンピック開催となった。開催の約2カ月前にはオミクロン株が猛威を振るい始め、五輪の準備にも影響が出る事態となった。

 「ストレスはそうとうたまりましたね」。2014年ソチ五輪も経験しているが、「その時とはまた全然違うストレスがあって」。

 大変だったのは北京入りまで。オミクロン株の影響で日本に帰れず5カ月の遠征を余儀なくされた。「北京の選手村に入るまでがすごい一番緊張してたんです」。ヨーロッパ遠征のあと2021年末に一度帰国して、その後北米シリーズに年明けから参加する予定だった。

 しかし、帰国する飛行機の同乗者にもし新型コロナ陽性者が出ると濃厚接触者になり強制的に14日間隔離となる。「普段だったら日本に帰って一度リセットして、遠征がまた始まってっていうシーズンなんですけど、それができなかったのでちょっと特殊なシーズンでした」

 そこで21年12月に滞在したのがウィスラーだった。これが星野さんにとって初めてのウィスラー滞在。「12月に来た時にすごい感動して。ウィスラーが大好きになって」。新型コロナが生んだ思わぬ息抜きとなった。

 が、それもつかの間。「ヨーロッパから北京に旅立つ前も、何日前までに陽性が出たら、もう絶対北京に行けませんよ、みたいな感じがあって」。緊張を強いられながらの遠征が続く。「もう毎日神頼みみたいな。そういうストレスは特殊だったと思います」

 北京に入ってからは毎日練習前にPCR検査。「北京に入ってしまえば、毎日検査して陰性が証明されている人ばかりなので」と思いながらも、濃厚接触者になる可能性はあり「毎日ハラハラはありました」と笑った。

 ただそれでも、「開催されるかわからない中で、無事に開催できて、オリンピックっていう舞台に自分が立つチャンスをもらえたってことに、すごく感謝しています」。

 北京での自分のモーグルについては「現役の集大成として臨んだ試合で、一番悔いのない滑りをと思って、全部出すんだって思って滑ったんですけど。ミスが目立ってしまって、最後のランはすごく残念ではあったんですけど」と13位になった試合を振り返った。

 ただ「自分が持っているものを全部出すんだっていう気持ちで滑り切ったのと、オリンピックまで自分がやってきたことだったりというのは一切悔いがないので、そういう意味ではやり切ったのかなって感じでした」

モーグルを選んだのは「心が揺さぶられたから」

 小さい時にオリンピックを見て競技を知った。最初に知ったのは1998年長野五輪。里谷多英選手が金メダルを取ったのが印象に残った。実際にやりたいと思ったのは2002年ソルトレイクシティ大会で「(上村)愛子さんと多英さんの活躍を見て、やっぱりカッコイイこの競技って思って」。ほかの競技を見てもあまり心が動かなかったが「モーグルだけは揺さぶれられて」。そこからモーグル人生が始まった。

 「モーグルを始めてからは毎週毎週のめりこんじゃって」と笑う。あんまりハマるものがなかった自分を「のめりこませてくれたのがモーグルだったんです」。

 その魅力を聞くと、「やっぱりコブがうまく滑れたときにめちゃめちゃ気持ちいいですよね。ジャンプが決まったときも」と返ってきた。「それに」と続けて「完璧なラン、全くノーミスのランってなかなか出すことができなくて。それもまたおもしろさの一つなのかな。もっと追求できるというか。もっとこうしたいなとか、こうなりたいなとか、ずっと思い続けられる、パーフェクトなランをさせてくれないのもおもしろいなと思います」と言って、どんな分野でもそうかもしれないですけどねと笑った。

 17歳で日本代表入り。遠征などに参加したのは20歳の頃。自分で遅咲きと笑う。それでも子どもの頃に夢見たオリンピックにも2回出場した。32歳で現役を引退して4カ月、今は「自分に何ができるのかなっていうことを考えてる感じですね」と話す。ただ決して燃え尽き症候群というわけではないと言う。

 周りの人は「アスリートとしてがんばってきて、それだけの集中力を持っている人は他のことでもなにか絶対できるよ」と励ましてくれる。

 「今まではスキーに向かってがんばってきて、目標が明確で、それに向かってやってたんですけど、今は目標とかやりたいことがなくて。なんかボア〜んとしてる状態です」。かといって悲観的なわけではない。

 「また新たな、今までみたいに大きな目標のモーグルに代わるなにか目標がまだみつかってなくて、なにができるのかなって思ってるところですね」。そして次の章へと向かう自分の可能性を探る充電期間として「いろいろなことに挑戦していきたい」と笑顔を見せた。

「ウィスラーで子どもたちにモーグルをコーチする貴重な経験」モーグル女子元日本代表 星野純子さんインタビュー(前編)

星野純子(ほしの・じゅんこ)
モーグル女子元日本代表。チームリステル所属。ロシア・ソチ、中国・北京冬季オリンピック出場。北京では13位。2022年3月21日の全日本選手権(2位)を最後に現役を引退した。
現在は、地元新潟や母校、福島などでの頻繁に講演を行うほか、地元新潟や富山のチーム、また北海道でもジュニアの指導にあたっている。

ウィスラーで開催されたMomentum Campsに参加したコーチ仲間とツーショット。Photo courtesy of Junko Hoshino
ウィスラーで開催されたMomentum Campsに参加したコーチ仲間とツーショット。Photo courtesy of Junko Hoshino

(取材 三島直美)

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